漸近龍吟録

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山手線30番目の駅名考〜品川新駅(仮称)の名前を考える〜

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 山手線にできる30番目の駅の名前を考える。2020年開業予定の田町駅と品川駅の間にできる、今は仮称で「品川新駅」と呼ばれている新駅の名称である。
 
 以下、ネットで見かけた駅名候補を、「駄目群」、「第二候補群」、「第一候補群」に分けて、一つ一つ検討していってみよう。
 
 私は基本的には歴史を大切にする立場を取る。
 
 先ずは駄目群から。
 

【駄目群】

「高輪」
 
 「高輪」にしようという声は多いが、高輪は駄目だ。高輪の町民は今までも強引にいろんな電車の駅に「高輪」の名前を付けてきた。都営浅草線の「高輪台」、南北線の「白金高輪」。今度JR高輪駅ができたら三つ目であり、しかもこの三つの駅はすべてバラバラのところにある。特に今度の山手線の新駅は高輪の町から離れたところにある。
 
 「高輪」を推す人たちの理由は「高級感があるから」ということらしい。しかしそれは完全に誤っている。山手線の駅名の影響力を解っていない。駅名、特に山手線の駅名の力は強大である。
 
 アンケートで「高輪」が良い、と答えている人たちに理由を聞くと、「高級感があるから」と言う。しかしそれは、高級な住宅がたくさんある街の名前に「高輪」と付いているから今は高級なイメージを抱けているのである。新駅に「高輪」という名前が付けば、多くの人々が「高輪」と聞いたら駅周辺の方をイメージするようになる。必ず元の「街」よりも「駅」の方が勝つ。駅の東側がどんな風に発展していくかは未知の部分もあるが、「ああ、あのオフィス街の」とか「ああ、あの工場地帯の高輪ですか」などとなっていく可能性もあるのである。将来、高輪の人たちは「違うのに…。工場地帯じゃなくて高級住宅街の高輪なのに…」と言って臍を噬むことになるかもしれないのである。
 
 高輪の街の人たちで新駅名を「高輪」にしようという運動をしている人たちもいるらしいが、私には、せっかくの高級なイメージを自ら捨てに行ってるようにしか思えない。
 
 
泉岳寺
 
 歴史を彷彿とさせる名前である。近くに都営浅草線の「泉岳寺」駅があるから同じ名前にした方がいい、利用者が混乱しないためにも、という意見は多い。
 
 しかし、泉岳寺からは以前駅名使用に関して訴訟があったので、この名前はもう使わない方がいい。
 
 今の線路上にできる駅なら「泉岳寺駅」のすぐ隣だから同じ名前にした方がいいという意見にもなろうが、新駅は100メートルほど東へずらした線路にできるのだから(つまり泉岳寺からは更に離れるわけだから)、駅名も別にした方がいい。
 
 
「三田」
 
 「三田」は、港区の地名の中でもとりわけ古い歴史のある由緒正しい名前である。が、やはり、新駅と三田の町が離れすぎているのと、「三田」と聞いて人々がイメージする慶應義塾大学も新駅から遠い。
 
  
「新品川」
 
 新しい駅名や市名等に「新◯◯」、「北◯◯」、「西◯◯」と安直に名付けるのは止めるべきである。隣の駅や隣の市のブランドに安直に乗っかるべきではない。「新しい感じがして解りやすい」と言う人がいるが、どんな駅だって何れは古くなるのである。今の人の感覚だけで考えるのはおかしい。
 
 それに「品川」は元々、目黒川の河口付近の「品川湊」の辺りを指す地名であり、現在の品川駅自体が、本来の品川よりかなり北に位置している。それよりさらに北にできる新駅は、本来の「品川」から遠く離れすぎる。
 
 

【第二候補群】

「芝浦」
 
 「芝浦」は「高輪」と並んで候補としてよく聞く名前である。新駅を東口に出ると、北には芝浦の町が広がっている。そんなに的外れな名前ではない。
 
 しかし、今は「芝浦」と言えば田町駅の東口の街、というイメージが定着している。田町駅でも東口のことを「芝浦口」と言っている。田町駅の方がよっぽど「芝浦」なのである。「芝浦で待ち合わせ」と言った場合、今までどおり田町駅の芝浦口なのか、それとも新駅なのか、という紛らわしい事態を引き起こす。
 
  
「芝浜」
 
 そこで出て来るのが「芝浜」。「芝浜」という有名な落語があり、一部の落語ファンの間では、これを機に失われた「芝浜」の名を甦らせたいと盛り上がっているようだ。
 
 だが、「芝浜」の場所は田町駅を高輪口に出て右に曲がった方にある。左に曲がるとか芝浦口に出るならまだしも、今度の新駅とはまったく逆の方向にあり、かけ離れすぎている。失われた歴史を甦らせる、という視点では「芝浜」案は面白いが、やはり場所が離れすぎ。
 
 

【第一候補群】

「港南」
 
 駅名を考えるときに、その駅の「住所」の町名を真っ先に考えるのは当然の考え方である。今度新しく駅ができるところの住所は「港南」である。なので、「港南(駅)」はある意味、最も妥当で当然の駅名である。
 
 ところで、新しい駅ができるときというのは、失われた古い地名を復活させるチャンスでもある。できるだけその土地に古くからある歴史ある名前を付けるべきである。
 
 しかし新駅ができる辺りは、そもそもが埋め立て地であり、何百年もの歴史があるわけでもなく、古くからの地名というものもない。「港南」という名前も数十年の歴史しかないと思われ、その名前の由来も「港区の南だから」という比較的安易な名付けである。
 
 それでも「港南」が第一候補なのは、「港南」は山手線の外側(東側)の街だからである。中心から外側へ向かって発展していく。特にあの辺りは埋立地であり、将来は外側に向かって発展する可能性が高い。その意味でも内側の町名(高輪など)ではなく、「港南」が良いのである。
 
 また「たかだか数十年の歴史しかない」と言っても、数十年でも歴史は歴史である。この街には「港南中学校」があり、この中学校の卒業生は「自分は港南育ちだ」「ここは港南だ」という意識があるだろう。
 
 気になる点をあげるとすれば、横浜市港南区港南台という町があり、鉄道会社は違うが「港南台駅」も存在する。比較的近い圏内に似た名前があると、やや紛らわしいかもしれない。(※2018/06/18追記:コメントで「港南台駅」はJR京浜東北線の駅にあるとの御指摘をいただきました。)
 
 
「高浜」
 
 「高浜」は「港南」という町名ができる前に、その辺り一帯の町名だった名前である。今は町名としては残っていないが、「港南」の街の真ん中を運河が流れていて「高浜運河」と言う。また「高浜橋」という橋もある。場所的にもぴったりである。
 
 「高浜」という地名の由来は「高輪の浜辺」というところから来ているらしい。このような埋立地としてはなかなか歴史のある地名であり、これは「港南」と並んで第一候補群になりうる。
 
 私はずっと、この「高浜」が一番良いと思っていた。「港南」より歴史がある。意味もある。ところが、調べてみたら茨城県石岡市に「高浜駅」があることが判った。JR東日本の駅であり、同じ鉄道会社の管轄内に同名の駅を作ることは難しいと思われる。なので、付けるとすれば「高浜橋」のように変化を加えないといけない。
 
 

【論外】 

 以下、ネットで見かけたが、論外のもの。
 
「高輪芝浦」、「品川泉岳寺」(等の複合名)
「品田」(品川と田町から一文字づつ)
「南田町」
「しながわ新都心
「東京サウスゲート」
「オリンピック2020ターミナル」
 
 

【まとめ】

 
 というわけで、私が今のところ推すのは「港南」。若しくは「橋」が付いてしまうのがやや残念だが「高浜橋」である。
 
 この二つを比べると、「高浜橋」のほうが日本語っぽい響きである。「渋谷」、「池袋」、あるいは「鶯谷」のような訓読み駅名となる。「港南」は「新宿」や「東京」と同じ音読み駅名でやや硬い響きになる。
 
 私が知らない名前で歴史や由緒があって「これしかない!」というぐらいぴったりな名前が他に出てくれば考えが変わるかもしれないが、今のところはこの二つか若しくはぎりぎりで「芝浦」といったところか。
 

 
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