天皇譲位後の皇后の名称として、有識者会議が「上皇后」を検討している、というニュースを聞いたとき、なぜ従来からある「皇太后」を使わないんだろうか、と疑問を持った。
有識者会議が「上皇后」という新しい名称を持ち出した背景を考えてみる。
有識者会議が「上皇后」という名称を新しく提案している背景の一つとして、「御夫婦の単位で」という問題があると思われる。「御夫婦でともに歩んでこられた」ということを重視している。
「御夫婦の単位」を考える時に、皇太后の謂わば「職権」に関する問題がある。
例えば摂政への就任資格。現行の皇室典範では皇太后は摂政に就くことができる。
上皇(仮)は摂政になれなくて皇太后(仮)は摂政になれるとすると、夫婦で揃わなくなる。妻はいいけど夫はだめ、ということになる。今上天皇は高齢による御公務の困難等を理由に譲位されるわけだから、譲位後に摂政に就けるようにするのはおかしい。となると、夫婦単位で揃えるためには、皇太后から今ある摂政への就任資格をなくすことになる。これは典範の根本的改定になる。そこで、どうするか。
「夫婦単位」と考えられるのは、夫(または妻)が生きているあいだである。そのように考えて、「夫がいる皇太后」と「夫がいない皇太后」に分ける。
不謹慎ながら、仮に上皇が先に薨った場合は、その時が来るまでは「上皇后」、その時が来たら名称が変わって「皇太后」となる。夫君が生きておられるあいだは、「夫婦単位」なので資格を制限し、なき後は謂わば「お独り身」なので、ある程度、行動の幅も広がり、資格も復活する。
その場合に、「夫が生きているあいだの皇太后」と「夫なき後の皇太后」を区別する必要から、有識者会議は「上皇后」という新たな名称を考え出したのではないだろうか。