漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

このままでは日本のデジタル通貨は新たなガラパゴスの道を歩む

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 「ガラパゴス」が嫌いである。
 
 ガラパゴスが優れているのを認めないわけではない。
 
 「この島の中では便利にお使いいただけます」という“内輪”な感じがいやだ。
 
 フィーチャーフォン、いわゆるガラケーも持ったことがない。ガラケーが優れているのは知っている。最近になって「iPhoneでApplePayでお支払いができるようになりました」などと言っているが、ガラケーでは10年以上前にできていたことである。
 
 ビットコインブロックチェーンの誕生をきっかけに世界中の目がデジタル通貨に向かい出した。各国の中央銀行が法定デジタル通貨の発行を検討している。そんな中、日銀は「つくる予定はない」と言ってるそうな。 

日銀・河合氏:法定デジタル通貨は技術的に可能-検討段階にない - Bloomberg

 
 今、日本でプロジェクトが進んでいるデジタル通貨と言えば、三菱UFJ銀行の「MUFGコイン」と、みずほ・ゆうちょ銀行グループの「Jコイン」だろう。 
 官製ではなく民間主導に任せていると、私は日本はふたたび(三たび?)ガラパゴス化の道を歩むのではないかという気がする。かつてNTTドコモソニーがスグレモノを作ってガラパゴス化を促進したように。
 
 デジタル通貨の話は「日本社会のキャッシュレス化」という文脈で語られることが多い。だが私はキャッシュかキャッシュレスかはどうでもいい。ただ囲い込み化、ガラパゴス化はしてほしくない。
  「Suicaはすばらしい」「もう全部Suicaでいいよ」と皆言う。たしかにSuicaに搭載されているFeliCaは、外国のNFCに比べて処理スピードも速く優れている。そして他の支払い方法よりもかなり便利である。
  しかし、この「スグレモノ」こそが曲者なのである。勝手に世界の最先端に進みすぎて気がついたらガラパゴス、というのが日本の携帯電話でやってきたことである。民間に任せているとこういうことになりそうな気がする。もっとも最近の官僚の為体ぶりを見ていると国だったらちゃんとしたものが作れるのかは疑問だが。
 
 心配なのは、MUFGコインやJコインが“便利そう”なところだ。便利であれば普及する。普及すればするほど日本の“型”に嵌まっていき、見事なガラパゴスになってしまうだろう。
 また、乱立も心配で、MUFGコイン、Jコインの他に、ナントカコイン、ナントカコイン、と出て来れば、これは電子マネーの世界で起こった乱立をデジタル通貨の世界で再び繰り返すことになる。
 
 日銀もいろいろ考えてはいるだろうが、あまりに拱手傍観しているとガラパゴス化していきそう。デジタル通貨のメリット・デメリットを考える際に、「ガラパゴス」の視点も添えてほしい。