漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

東京オリンピック2020のマラソンは時間帯を早めるのではなく

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 2020年東京オリンピックのマラソンを猛暑の中で行うことに批判が出ている。
 
 東京オリンピックが行われる7月から8月は、一年で最も暑い時期であり、そんな猛暑の中を選手に走らせるのは熱中症などの虞があり危険である、という声だ。こうした声を受けて、組織委員会は従来の予定では午前7時半だったマラソンのスタート時刻を午前7時に繰り上げた。
 
 だが、私は、こうしたスタート時刻の繰り上げは、暑さ対策としてはあまり効果がないと思う。その理由は「東京の朝は暑い」からである。
 
 
 埼玉県熊谷市。関東地方では「暑い街」として有名であり、全国でも「日本一暑い街」として知られている。この熊谷と東京を比べたらどっちが暑いと思うだろうか。それはもちろん熊谷の方が暑い。だが、時間帯によっては東京の方が暑いのである。
 
 一日の時間帯による暑さの違いに注目してほしい。
 
 下記の表はオリンピックが開かれる7月24日〜8月9日の過去15年間の時間帯別平均気温を東京と熊谷で比較したものである。(気象庁のデータより抽出)。

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 この表をグラフにしたのが下図。
 

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 赤い線が東京で緑の線が熊谷である。「熊谷の夏の気温が32.1度?」と驚く人もいるかもしれないが、颱風や雨で涼しい年もあるので平均するとこうなる。
 
 熊谷が東京の気温を上回っているのは、昼から晩にかけての時間帯であることが分かる。そして午後8時以降、夜間はずっと東京の方が暑い。朝を迎えてもずっと東京の方が暑く、熊谷が東京に追いつくのはやっと午前11時頃になってからである。
 
 熊谷は昼と夕方が暑いが、東京は夜と朝が暑いところに特徴がある。
 
 多くのマラソンランナーが走っているであろう午前8時の時点で東京はすでにかなり暑いのである。午前7時半のスタートを僅か30分早めて午前7時にしても、やっぱり暑いのである。上の表は平均気温なので涼しめに感じるが、猛暑の年だったら東京は朝8時の時点で30度近くに達する。
 
 熊谷のような街なら、朝のスタート時間を早めることで少しは「暑さ減」が期待できるだろう。だが東京のように夜間・朝が暑い街ではそこまでの効果が期待できない。サマータイムを導入してさらに二時間早めて、午前5時にスタートするようにしてはどうか、という意見も出ているが、午前5時の東京の気温の高さを見てほしい。熊谷より平均1.5度も高く、これは一日の中でも最大の差である。
 
 何が言いたいかというと、東京の夏は夜と朝が暑い!というところに東京の夏の暑さの特徴があるので、朝のスタート時間を多少早めても、他の街ほどの効果は見込めない、ということ。
 
 なので、スタート時間を早めるよりも、マラソンを東京以外の街で実施した方がよっぽど「暑さ減」が期待できる。例えば北海道とか。
 
 「『東京』オリンピックなんだから、マラソンコースが北海道というわけにもいかないでしょう」と思う人がいるかもしれないが、東京以外で行われる競技はたくさんある。実際、サッカーの一部の試合は北海道で行われる。IOC委員が認めさえすれば、東京以外で行うことは可能である。
 
 夏の暑さの話をする時は、一日の時間帯別でも見てほしい。東京の夏の暑さの特徴は、夜と朝が暑い、というところにあることをもっと多くの人に知ってほしい。