漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

「ナントカペイ」とガラパゴス化の構造

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 所謂「ガラパゴス」は好む人と好まない人がいる。私はあまり好まない。
 
 ガラパゴス化というのは、マラソンに例えると、マラソンの先頭を走っているようなものだ。ただし、一人だけ違うコースを。
 
 あとで「どうやらコースはこっちじゃないらしい」と気づいて数キロメートル戻る。
 
 日本でいちばん有名な「ガラパゴス」であろうガラパゴスケータイは、当時、機能面では世界の最先端を走っていた。
 
 だが、その後、日本国民は皆「不便な」スマートフォンに乗り換えた。今でこそスマホにもいろいろな機能が搭載されるようになってきたが、日本に登場したばかりの頃のスマホは、ガラケーにくらべてできないことがとても多かった。それでも人々はその不便なスマホに乗り換えた。コースを逆走したのだ。
 
 日本はいまキャッシュレス決済の分野で再びコースを逆走しようとしている。QRコードという、日本では20年以上前に聞いた地点まで戻ろうとしている。
 
 日本はキャッシュレス決済分野ではずっとFeliCaというコースを走って来た。それは世界の最先端を行ってるはずだった。ところが今ごろになって「どうやらコースはこっちじゃないらしい」と言って、来た道を戻ろうとしている。しかも正しいコースの名は「QRコード」というらしいのである。
 
 QRコード、懐かしい響きだ。それもそのはず、QRコードはもう20年以上前に日本で生まれて一時期流行った技術だ。今、日本は「ナントカペイ」が乱立して、その大昔の地点まで戻ろうとしている。
 
 日本がQRコードの導入、普及に必死になるのは、中国に対して遅れているという焦りを感じているからだ。だが、日本で無事にQRコード決済が普及したころには、中国はQRコードを捨てて、生体認証決済にでも移っているだろう。日本の店舗が銀聯カードにいっしょうけんめい対応した頃には、中国人は銀聯カードから支付宝、微信支付に移っていたように。
 
 日本は世界に遅れまいとするが、コースを逆走すれば、当然世界からは遅れる。
 
 コースを逆走するのは、コースをよく確認しないで我が道を独走するからである。
 
「ここは日本なんだから、世界がどうとか関係ない。あくまで私たち日本人の日常生活が便利であればいい」
 
 そう言う人は多い。もちろんそういう考え方はあっていい。だが、それならそれでガラケーで突っ走るべきであり、“不便な”スマホに乗り換えるべきではないのだ。
 
 FeliCaを愛用する人の意見は概ね、
 
「タッチした時の反応が速くて便利だから」
「このカードとこのカードを結びつけるとチャージの手間が省けて便利だから」
「このカードだとポイントが貯まってお得だから」
 
といった「卑近な便利」を語るものばかりだ。
 
 日本人は卑近な便利について考えるか、世界の真似をしようとしてコースを逆走することしかしない。
 
 日本でガラパゴス化が加速するのは、日本人が皆、卑近な便利ばかり考えているからだ。
 
 消費者は皆、ポイントが貯まってうれしい。企業は利用者が増えてうれしい。ここに「閉じたウィンウィンの関係」ができてしまうので、皆このんでその道を行く。誰もそのコースから外れようとは思わない。いつしか日本のメインストリートになってしまう。日本人は大道になればなるほど安心するという特性があるので、「私も、私も」と参加者が増えて、それがますますガラパゴス化を加速する。
 
 だから日本がガラパゴス化の道を走らないようにするためには、ある程度、国策で道を正していく必要があるのだが、国はそんなことは考えていないし、そもそも大企業とはズブズブの関係にあるので、国にはそんなことはできない。
 
 だとしたら、私たち国民がもっと賢い選択をしていくしかないのだ。
 
 いつまでガラパゴス独走と逆走を続けるつもりなのか。
 
 
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