漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

ビットコインを通貨として普及させる方法を考える 〜ビットコインピザデーに〜

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 米国のプログラマーLaszlo Hanyeczが世界で初めてビットコインで買い物をしてから今日で9年になる。
 
 この9年でビットコインの価値は飛躍的に高まった。Laszlo Hanyeczはピザ2枚を10,000BTCで買ったが今ならおそらく0.01BTC以下で買える。しかし、それはあくまでもピザ屋がビットコインを受け入れてくれればの話だ。
 
 世界でビットコインで買い物をしたことがある、という人は全然増えていない。あれから9年も経っているのに。この間、ビットコイン知名度は高まったが、依然として多くの人はビットコインを投機の対象として捉えている。
 
 私は以前よりビットコインは通貨として、つまり決済手段として広まってほしいと思っている。だが「ビットコインボラティリティ(価値の変動)が大きいから決済の手段としては向いてない」と言う人も多い。「ビットコインは単なる通貨ではない。他の機能がある」と言う人もいるし、「ビットコインは通貨というよりは金(ゴールド)である」と言う人もいる。それらの意見が正しいとしても、私はビットコインにもっと「通貨」として普及してほしい、と思っている。
 
 そこで、Bitcoin Pizza Dayの今日、どうやったらビットコインが普段使いの「お金」として使ってもらえるか、考えてみた。
 
 先ずは、支払われる側の問題がある。
 
 ビットコインでの支払いを受け付けます、という店が増えなければいけない。今のところは少ないが、これはもう少し増やすことができるのではないか。ビットコインを受け付けている店が少ないのは「ビットコインで支払われるのが嫌だから」というよりも「なんか難しそう」という理由で敬遠している店も多いと思われる。アプリとコンタクトレスまたはQRコードでもいいが、簡単なスキームを作って提供することで、受け付ける店は増えると思う。
 
 次に支払う側の問題がある。
 
 例えば今でも、ビックカメラのようにビットコインでの支払いを受け付けている店はある。そこに円とビットコインを持ってる人が買い物に行ったとして、円とビットコインのどちらで払うか。おそらく円で払うだろう。なぜかと言うと、ビットコインはそのまま手元に持っていた方が後々価値が上がるのではないか、という気持ちを持っている人が多いからだ。つまり、今ビットコインを持ってる人たちは買い物でビットコインを手放したくない、という強い心理が働いている。自分たちのウォレットに大切にしまい込んでしまっていることがビットコインの通貨としての普及を妨げている。
 
 なので、支払う瞬間に円からビットコインに変わるアプリを作ったらどうだろう。
 
 アプリの中で自分の銀行口座と結びついている。デビットカードのように使うことができる。支払いの具体的な方法は、NFCでもQRコードでもオンラインでも他の方法でも、それは何でもいい。1300円の品を買う時、買い物客はアプリに「1300円」と入力して送信ボタンを押す。「このレートで支払います。よろしいですか?」という確認画面が出るので「はい」を押す。
 
 買い物客の銀行口座からは1300円が即座に引き落とされるので、払っている方としては確かに円で払っている感覚である。そしてアプリがその場ですぐにその時点でのレートでのBTCに変換する。例えば2019年5月現在だったら、1300円は約0.0015BTCだ。店は0.0015BTCを受け取る。
 
 このアプリの肝は、支払う側が「あくまでも円で払っている」、「自分が所有しているビットコインを手放していない」という感覚が持てるところだ。
 
 ビットコインATMを決済アプリにするようなものだ。ビットコインATMは円やドルのような法定通貨からBTCに換えてしまうから手放したくなくなる。アプリで支払う瞬間にその時点でのレートで変換する。客は円で支払い、店はBTCで受け取る。
 
 実際、客側から出ていくのは1300円きっかりなので問題ない。問題があるとしたら店側の方で、レートの変動が大きく、瞬間的にかなり損な価格でBTCを受け取ってしまうかもしれない。だが、今の時期はまだ、多くの人が将来的にはビットコインの価値は上がっていくのでは、と思っている時期だから、瞬間的には多少安い価格で支払われてしまったとしても、長い目で見たらビットコインが手元に入ってくるのは得だと考えるのではないか。
 
 日本のCoincheck Paymentなどがやっているように、ビットコイン自身が抱える遅延や手数料の問題は運営会社が調整することで、店と客には負担をかけない。
 
 あとは、そのアプリを作って運営している会社が取る手数料はどうするのか、収益はどうやって上げるのかとか、法律上の問題はどうなるのかとか、考えなければいけないことは他にもいろいろあるが、とりあえず大まかにはこんなアプリが作れれば、ビットコインがもっとカジュアルに街の中に流れるのではないか。
 
 今はまだビットコイン決済手段として広まるか広まらないかの分岐点にある。こういうアプリを作ったらすぐに広まるというわけではないだろうが、きっかけにはなるのではないか。
 
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