漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

地球温暖化問題は先進国と途上国の対立問題ではない

f:id:rjutaip:20190930203229j:plain

Gerd Altmannによる画像
 
 9月23日に行われた国連の気候行動サミットでスウェーデンの16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが激しい口調で地球温暖化問題を訴えた。
 
 これに対する大人たちのコメントで情けないものをたくさん見たが、特に多く見られたのが、次のようなコメントだ。
 
「よくもそんなことを」 トゥンベリさん、怒りの国連演説 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News

あくまで先進国の恵まれた若者の主張で、発展途上国の若者は俺達に貧しいままでいろと言うのかと言われるし、あっち立てればこっち立たずなんだよなぁ

2019/09/24 08:43
「よくもそんなことを」 トゥンベリさん、怒りの国連演説 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News

途上国の子どもが「私たちの目の前で扉を閉めるのか。よくもそんなことを」って反論し始めたら最高なんだけどなw

2019/09/24 10:03 
 あるいはTwitterで1万以上のいいねを獲得していた次のようなツイート。
  
 「スウェーデンのような先進国の恵まれた環境で育った人が何を言うか」と言う。これらはありえない批判だ。出自で批判してはいけない。そんなことを言ったらスウェーデンで生まれ育ってしまったトゥーンベリさんは、これからどうやっても一生、温暖化問題について何も言えなくなる。トゥーンベリさんだけではない。スウェーデン人全員、あるいは先進国であるヨーロッパ、アメリカで生まれ育った人は誰一人として温暖化問題を語ることができないことになる。
 
 「この人が不便を受け入れるなら、話は分かるけど」と言っているコメントも見た。トゥーンベリさんは不便を受け入れるのではないか?
 
 「自分たちは今までCO2をたくさん排出して便利な生活を享受してきたくせに、途上国にはそれを規制して便利な生活を送らせないと言うのか」と言っている人がたくさんいる。しかし、その認識は間違っている。
 
 先ず、まだ16年しか生きていないトゥーンベリさんはそんなに「享受」してきていない。仮に豊かな生活を享受していたとしても、豊かな生活を享受することと経済成長を推進することは、まったく異なることである。また、豊かな生活というのは、必ずしも経済成長によって齎されるわけではない。
 
 次に、CO2をたくさん排出する=先進国、という発想が間違っている。同じ先進国でもアメリカのCO2排出量は多いがスウェーデンは少ない。途上国と称している国でも、中国やインドのようにCO2をたくさん排出している国もある。
 
 日本国内を見ていてもわかるだろう。日本で最も便利さを享受している東京人は、日本で最も自動車に乗っていない人たちである。田舎の人たちほど自動車に乗りたくさんのCO2を排出している。CO2をたくさん排出する権利=便利な暮らしができる、という考え方が時代遅れなのである。
 
 そもそもトゥーンベリさんが訴えているのは“We 私たち”の問題なのだ。
 
 「船が沈んで行ってるから何とかしましょう」と言う人に対し、「うるさい。何を幼稚なことを言ってるんだ」と返す。こんな愚かなことはない。その船はトゥーンベリさんだけが乗っている船ではない。“私たち”も同じように乗っている船なのだ。「船が沈みかけていることに気づかせてくれてありがとう」と言うべきところだ。
 
 「喧嘩を売っといて云々」というコメントも見た。トゥーンベリさんのあの演説を聞いて、「自分が喧嘩を売られた」と感じている人がいるのも信じられない。
 
 途上国のCO2の排出量が規制されたら途上国の未来が奪われる、などというのは頭の固い、時代遅れな発想だ。CO2が増えて地球がどんどん温暖化していった時に苦しむのはむしろ途上国の人間である。        
 
 先進国も途上国も関係なく地球温暖化に向かい合わなければいけない時に何を言っているのか。
 
 
【関連記事】