漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

「確定申告」という謎の行事

 
 確定申告。
 
 この言葉を聞くと憂鬱な気分になる人も多いだろう。
 
 私は前から、この「確定申告」という行事の意味がわからない。どういう理由で何のために行われるのか。なぜこんなにもたくさんの国民が確定申告に頭を悩ませているのか。
 
「複雑すぎて自分ではとても解らないから、税務署に行ったら、税理士さんが解りやすく書き方を教えてくれた」。
 
 そういう話をよく聞く。だが、なぜ国民が計算しなければならないのか。
 
 国民一人一人の納税額は税務署(国税局)側が計算するべきではないのか。マイナンバーを使えばわかるはずである。
 
 銀行にもマイナンバーを届け出ている。証券会社にも届け出ている。会社にも届け出ている。扶養家族の情報も住民票から分かる。税務署はマイナンバー連携を使って市役所から住民情報を教えてもらうことで、家族構成や世帯主も把握することができる。これだけのことを把握できて、国民(例えば私)の所得税額がわからない、などということがあるだろうか。
 
 「預金額とか家族構成とかはプライバシーなので、マイナンバーをそういうことに使っちゃいけないんでしょう」と思ってる人がいるかもしれない。
 
 たしかにマイナンバーは利用目的の「3本柱」と言って、「税」「社会保障」「災害対策」の3つ以外の目的で利用してはいけない、という厳しい決まりがあるが、税務署は「税」を取り扱っているので、マイナンバーを使える立場にある。
 
 マイナンバーで、会社の給与も銀行も証券会社も家族構成までもがっちり把握できるのに、どうして納税額が計算できないのか。
 
 基本的な考え方が逆なのである。
 
 納税額は税務署の方で計算する。もし、わからない・不明な点があれば、国民のところに聞きに行けばよい。不明な点がなければ計算し終わったものを国民に通知する。国民はその金額に異議がある場合は税務署に連絡する。異議がなければ「いいよ」のボタンをタップする。そしてその瞬間に銀行口座から税金が引き落とされる。
 
 国民は税務署からスマホに届いた書類にざっと目を通し、「いいよ」をタップする。これだけ。これが納税のあるべき姿ではないのか。どうして国民に複雑な計算をさせ、難解な書類を書かせるのか。
 
 繰り返しになるが、「国民が計算して分からなかったら税務署に聞きに行く」のではなく、「税務署が計算して分からなかったら国民に聞きに行く」のが筋である。
 
 私はもう長年「確定申告」が謎でしかたない。どうして「申告」なのか。冗談ではなく深刻な問題である。
 
 私は(直接の)確定申告をしたことがないので、この分野に詳しい人がいたら「どうして」「何のために」確定申告があるのか教えてほしい。
 
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