漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

年末年始休という謎の休み

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Andreas Lischkaによる画像

 昔からずっと不思議だった。
 
 年末年始はなぜ休みなのか。
 
 カレンダーを見てみる。1月1日は赤くなっている。だがそれ以外の12月30日も31日も1月2日も3日もすべて黒字で書かれている。
 
 年末年始は企業も行政機關も当たり前のように休むけど、いったい何の根據があって休んでいるのか。
 
 調べてみた。
 
 企業や店は法律はなく、ただ慣習で休んでいるだけ。
 
 公務員の場合、「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」という法律があって、その14条で12月29日から1月3日までは休日と定められている。この法律を元に休んでいるわけだ。
 
 しかし、この法律は公務員や行政機関にのみ適用される。企業、店、病院等は特に決まった法律があるわけではない。そしてこの法律の起源は明治6年に定められた太政官布告である。
 
 こういうことを言うと「年末年始くらい休ませろ!鬼か!」と言う人が出てくるが、私は普段好きな時にもっとどんどん休みをとればいいと思う。
 
 ゴールデンウィーク、盆休み、年末年始。大体の日本人にとってまとまった休みは、一年でこの三回だけである。そしてたったのこの三回に皆で一斉に休みを取る。なぜ「いっせーのせ」なのか。
 
 毎年、12月29、30日頃には帰省ラッシュのニュース、1月3日、4日頃にはUターンラッシュのニュース。東京駅で新幹線から降りてきたお父さんがぐったり疲れきった様子で「明日からまた仕事です」とTV局のインタビューに答えている。
 
 これで「休んだ」ことになるのか?日本人は渋滞や長蛇の列に並ぶのが趣味なのか?全国で同時期に一斉に休むからこういうことになる。
 
 「実家に帰って正月を迎える準備をしなければ」と言う人もいるかもしれない。私の祖母は伝統的なしきたりや慣習をとても重んじる人で、11月頃から何週間もかけて正月をきちんと迎える準備をしていた。たったの一日や二日で何が準備できると言うのか。
 
 「せめて三が日ぐらいまでは正月気分でいたい」と言う人がいるかもしれない。だが、それもおかしいのである。今のお年寄りたちに話を聞くと、昔は1月20日くらいまでは正月気分で、会社に行っても働いているような働いていないような、という雰囲気で、20日を過ぎた頃くらいから徐々に元通り真面目に働き出す、という会社が多かったらしい。それは会社だけではなく店も同じで半分休業半分営業という雰囲気が世の中全体にあったと言う。
 
 つまり、昔はもっと「正月」というものは長かったのに、段々と短くなっていって、今では1月2日にはもうすでに正月気分はない。
 
 「正月」は昭和の頃に比べてどんどん短くなり、ほんの数日にぎゅっと圧縮され、その僅かな間に慌てて帰省し慌てて戻る。休み中は子ども相手と渋滞ラッシュでくたびれ果て、次の日からすぐ仕事。
 
 こんな「苦行年中行事」は改めるべきだ。
 
 時代に合っていない旧い法律を改めて公務員は年末年始も働くようにした方がいい。もともと法律に縛られていない民間企業は率先して年末年始も働こう。
 
 あと、「年末年始まで働けと言うのか!鬼!」と言う人は、年末年始に電車に乗って初詣に行くべきではない。鉄道会社の人がかわいそうだろう。年末年始にインターネットも使うべきではない。インターネットプロバイダー会社の人がかわいそうだろう。
 
 私の職場は、12月は31日まで仕事。1月は2日から仕事だ。1月1日は何故休みかって?1月1日は元日(がんじつ。元旦ではない)という祝日だから休みだ。
 
 昭和の頃に年末年始が休みだったのは、その後1月20日過ぎまでなんとなくダラダラ休める、ということがセットとしてあった。だが今はもうとっくにそんな雰囲気は無い。それなのに年末年始休という旧習だけが残っているのは徒に日本国民を苦しめているだけだ。
 
 公務員の法律も、「なんとなく習慣だから」で年末年始を休みにしている会社や店も、在り方を見直すべきである。