漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

一律10万円の特別定額給付金にはマイナンバーは使われない

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 多くの国民が政府の戦略にまんまと乗せられている。
 
 政府が全国民一律で10万円の特別定額給付金を支給することを発表した。この給付金の支給に時間がかかっている。申請には郵送とオンラインの二種類の方法があって、マイナンバーカードを使ったオンライン申請の方が手続きが早く済んでいる。
 
 この支給がなかなかスムーズに行ってない事態を以て、「マイナンバー及びマイナンバーカード導入の時に反対した人たちがいたからだ」と言ってる人たちがいるが、これはもう政府の思惑にまんまと乗せられているのである。
 
 たしかに現時点でのマイナンバーカードの普及率は2割に満たない。だがマイナンバーの普及率は約100%である。政府が16%の方ではなく100%の方を使えばよい話なのである。政府はここで敢えて16%の方を使うことによって、国民に「不便感」を感じさせている。「マイナンバーカードを持ってる人は早く申請できていいなあ」、「こんなことならマイナンバーカード作っておくべきだったなあ」と思わせる。そして、マイナンバーカードを作っていた16%の人々には「あの時、反対してた人たちが悪い」と言わせる。
 
未だにカードなしで番号だけあれば良いだろなんて言ってる人が多数なので原因は国民のITリテラシーの低さでしょう
と言っているコメントを見かけた。
 
 たしかに「申請」という形式に拘るならば、マイナンバーだけでは駄目でマイナンバーカードが必要である。しかし政府が「申請」という形式にしなければマイナンバーだけで支給することは可能なのである。特別定額給付金は、本来、マイナンバーの担当分野である。マイナンバーカードを使ってはいけないということはないが、その前に先ずマイナンバーを使わなければいけない。
 
 私はこの支給にマイナンバーを使うべきだという考えをずっと主張しているが、その話の前に「給付金の申請にマイナンバーが使われる」と誤解している人がどうも多そうなので、今日は「特別定額給付金の支給にマイナンバーは使われない」という話を書こうと思う。Q&A方式にしてみた。
 
Q1「マイナンバーカードが使われるってニュースでやってたよ?」
A1 マイナンバーカードは使われるが、マイナンバーは使われない。たしかにマイナンバーカードを使ってオンライン申請をすることができる。ただしマイナンバーカードも必須ではない。マイナンバーカードを持っていない人は紙(郵送)で申請できる。マイナンバーとマイナンバーカードの違いは次の通り。
 
マイナンバー:12桁の数字からなる番号
マイナンバーカード:プラスチック製の札
 
Q2「マイナンバーカードをカードリーダーに翳した時にマイナンバーも読み取られるのでは?」
A2 マイナンバーカードをカードリーダーやスマホに翳す時に、マイナンバーは読み取られない。マイナンバーカードのICチップの中に入っている電子証明書が読み取られる。「マイナポータルにログインする時に電子証明書が必要なんですよね!」と言ってる人もたまに見かけるが、特別定額給付金に関してはマイナポータルへのログインは必要ない。電子証明書が必要になるのはその先。
 
Q3「マイナポータルでいろいろ入力する時にマイナンバーも入力するんでしょ?」
A3 マイナンバーを入力する欄はない。
 
Q4「券面事項入力補助用暗証番号の入力を求める画面が出た。ここで暗証番号を入力したらマイナンバーを読み取られるのでは?」
A4 原理的には、そこでマイナンバーを読み取られるが、その読み取られたマイナンバーが使われることはない。ここで暗証番号を入力するのは住所や氏名などの入力の手間を省くため。
 
Q5「本人確認のためにマイナンバーが使われるんじゃないの?」
A5 本人確認のためにマイナンバーは使われない。紙の申請書にもマイナンバーを書く欄はない。オンライン申請においては、本人確認はマイナンバーカードの所持認証と署名用電子証明書(パスワード)によって行われる。電子証明書の中にはマイナンバーは入っていない。
 
おわりに
 政府が好き勝手に暴走している。この暴走、暴挙を止めなければいけないが、国民の側が知識・理解が追いついていなくて批判が的外れになってしまっているのも多く見かける。国民の無知につけ込んでやりたい放題をやっているのが今の政府だ。
 
 もっとも私は、今回、政府が「マイナンバーカードを使うこと」に憤っているのではない。「マイナンバーを使わないこと」に憤っているのである。私はマイナンバー制度が始まる前からずっとブログ等で、まるで政府の手先の広報担当のようになってマイナンバー制度の解説記事を書いてきた。それも偏に国民にマイナンバーやマイナンバーカードの仕組みについて正しく理解し、正しく政府を批判してもらいたいと思っているからだ。少なくともマイナンバーとマイナンバーカードの違いぐらいは理解できる人が一人でも増えてほしい。そんな思いでマイナンバー関聯の記事を書き続けている。
 
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