今のデジタル庁には優秀な人も何人か参画しているので少しは期待していた。が、やはり期待するのは間違っていたのかもしれない。
デジタル庁はワクチン接種証明書デジタル版の発行にあたってマイナンバーカードを必須とした。
東京新聞が「なぜマイナンバーカードが必須なのか?」と質問したのに対して、「VRS(ワクチン接種記録システム)がマイナンバーと紐付けられているため」と回答している。これはまるで答えになっていない。そこですぐに「それはマイナンバーが必須の理由であってマイナンバーカードが必須の理由ではないですよね?」と重ねて聞かなかった東京新聞も東京新聞なのだが。
デジタル庁がデジタル化社会に逆行するようなことをしてはいけない。
国はおそらく解っていて、敢えてこうしたはぐらかしたような答えをして煙に巻いているのだが、悲しいのは何も解っていない愚かな国民は煙に巻かれていることにすら気づいていないことだ。
ネット上には「早速アプリを使ってみた」、「本当に数分で証明書を発行できた、これは便利」、「マイナンバーカードを持っててよかった」という書き込みが溢れた。「便利」とは何か、ということが解っていないのだろう。
便利とは、今あるものに何かプラスアルファの価値を加えることである。デジタル庁はプラスせずに引っこ抜いて(マイナス化)している。「それがなければできない」という状態に持って行くことは「便利化」ではなく「不便化」である。
「この調子で、あらゆる紙の手続きをデジタルに置き換えていってほしい」と言ってる人もたくさん見かけた。紙の手続きがデジタルに置き換わって「ワーイ」と言って喜ぶのは後進国の人間の発想だ。
「デジタル(化)社会」とは、誰もが当たり前にデジタルにアクセスできる社会のことである。デジタル庁はその先導役なのだから、ワクチン接種証明書デジタル版は誰もが持てるようにするのがデジタル庁の仕事であるはずだ。それを誰もが持てないようにするというのはデジタル社会に真っ向から反対する行いだ。
民間企業は営利を追求する組織だからまだしも(それでも気に入らない行為だが)、国はこんなことをしてはいけない。