漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

女性対オタクの問題を見ていて思うこと

Steve Buissinneによる画像
 
 数年前からネット上で、一部の女性と(主に男性の)オタクたちの啀み合いをよく目にするようになってきている。
 
 特に問題となっているのは、いわゆる「萌え絵問題」である。
 
 秋葉原の街など公共の場所に「萌え絵」が描かれている。萌え絵は未成年の少女に見えるキャラクターが性的に強調されて描かれている絵だ。
 
 フェミニストと呼ばれる女性たちがこれを問題視している。また、こうした日本文化は欧米でも問題視されている。それに対して、主に男性と思われるオタクたちが反撥しているというのが現状である。
 
 私自身はと言えば、私は非オタクなのでああいう絵は好まない。私は秋葉原の街は仕事でしょっちゅう行くけれども、ああいう絵は不快だし無くなってほしいと思っている。
 
 だが一方で、オタクたちの反撥する気持ちもわからないではない。
 
 そもそも、この数十年は「女性の道」ばかりが整備されてきた数十年だった。「男性の道」は整備されないどころか、ひたすら制限される一方だった。
 
 女性は快適に道を歩けるようになる一方で、男性たちはひたすら窮屈な思いをしどんどん女性との接触そのものを避けるようになっていった。多くの男性たちが、もう生身の女性と関わるのは「面倒事」でしかない、という認識になっていった。
 
「はい、もう結構です。僕はこれからは2次元の女性だけを見て生きていきます。あなたたち3次元の女性には一切迷惑はかけませんから」
 
 そう言って多くの男性たちが「面倒」で「厄介」な3次元(リアル)の女性を避け、2次元の世界に逃げ込んで行った。そして「逃げ込んだ」男性たちは2次元の世界でやりたい放題、のびのびと振る舞った。
 
 オタク男性たちは「フィクションなんだから別にいいじゃないか」とよく言うが、私は日本のオタク文化における表現はフィクションにしても行き過ぎていると思う。
 
 日本はこの2次元の世界の文化が異様に発展している。3次元リアルの世界で息苦しくなったことへの反動だろう。これはいわゆる日本の「会社文化」に似ている。仕事中は真面目で堅苦しく、飲み会になると嵌めを外し過ぎる。欧米人が飲み会でもそこまで嵌めを外さず、仕事中もそこまで堅苦しくないのと対蹠的である。
 
 3次元の世界があまりに息苦しく、2次元の世界に逃げ込んでやっと自分たちだけで自由に伸び伸び楽しんでいるのに、そこにまで口を出されたら反撥を感じるのは当然だと思う。
 
表通りを「キレイ」に保つために男性たちを追い詰める。
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息苦しくなった男性たちが2次元の世界に逃げ込む。
 ↓
「自由」な世界でオタク男性たちは好き勝手放題。
 ↓
発展しすぎた2次元文化が表通りに溢れ出る。
 ↓
表通りに見えている2次元文化が不快だと批難する。
 
 これは男性たちにとっても女性たちにとっても不幸なことだ。3次元の女性に興味を持たず2次元の女性にしか興味を持たない(持てない)男性が増えているということ自体が異常なことだと思う。もっとリアルの世界で男性たちが生きやすい道を整備していかなければならない。そのことが引いては女性たちにとっても生きやすい世界に繋がる。