漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

菓子類のおもて面に「酒」と書いてほしい

 

 以前、こんなニュースを見た。
 菓子好き、酒苦手、な私は以前から、どうして菓子類の表の面に「酒入り」と注意書きをしてくれないのかと思っている。
 
 朝日新聞のこの記事によれば、菓子類には「酒類」との表示義務はない、とのこと。チョコレート菓子についてのみ、「全国チョコレート業公正取引協議会」が表示に関するガイドラインを自主的に策定しているだけだそうだ。
 
 菓子を買うときに毎回裏面の原材料名のところに小さく書かれた「洋酒」の文字を探し出さなければならない。
 
 嘗てこんな体験をしたことがあった。私は外でバウムクーヘンを買っておやつとして食べた。が、その後急速に体調が悪くなった。心臓の動悸が激しくなり、どうしてこんな急激に体調が悪くなったんだろうと思って、捨てたバウムクーヘンの包装ビニールの裏面を見たら「洋酒」と書いてあった。
 
 しかし私が驚いたのは、その包装には、おもて面に「本製品は小麦・卵を使用しています」という注意書きがあったことだった。そしてさらに丁寧なことに「同じ製造ラインで大豆を使用しています」とまで書かれていた。このメーカーは商品に使用されてないけど同じ製造過程で使われている原料までわざわざ親切に書いてくれていたのだ。そこまで念には念を入れる親切な企業が、どうして「酒」という一文字をおもての目立つところに書けないのか。
 
 世間にはこう言う人がいるかもしれない。
「これが苦手な人もいるんですとか、あれが苦手な人もいるんですとか、そういうレアケースの声をすべて拾っていたら、パッケージは注意書きで埋め尽くされてしまいますよ」と。
 
 だが。アルコールが苦手、という人は全然レアケースではない。むしろメジャーである。卵アレルギーや小麦アレルギーの人より多いのではないか?日本は世界的に見ても下戸遺伝子を持った人が多く、酒に弱い人種である。アルコール駄目、苦手という人はこの国にはとてもたくさんいる。
 
 「菓子にそんなに酒が入ってたっけ?」と思う人もいるかもしれない。それがかなりの確率で入っているのである。「私がふだん食べている菓子には酒は入っていない」と思っていても裏面をよーく見てみると小さく「洋酒」や「酒精」と書かれている。ぜひ菓子箱や菓子袋を一度引っくり返して見てみてほしい。皆さんが普段食べている菓子にも酒は含まれているのだが、アルコール度数が低すぎてほとんどの人は気づいていない。
 
 菓子好きアルコール駄目な私はスーパー中の菓子類をひっくり返しているわけだが、体感的にはだいたい二分の一くらいの菓子に酒が入っている。私はレーズンが好きなのだがレーズンが入っている菓子にはかなりの高確率で洋酒が入っている。だからレーズン入りの菓子を買うときは注意しているが、レーズンが入っているからと言って必ずしも酒が入っていると決まっているわけではないところが難しい。そのほか、チョコレートやクッキー、シュークリーム、クレープ、プリン、ケーキなど、一見まったく酒など入っていなそうな菓子でも、裏面の原材料名を見たら「洋酒」「酒精」と書いてある。
 
 「洋菓子ではなく和菓子にすれば?」と思う人もいるかもしれないが、和菓子にも酒は入っている。饅頭の裏面を見ると「酒糟」と書いてある。しかし別の饅頭には書かれていない。つまり、酒が入っているかいないかは菓子の種類に依ると言うよりは「商品に依る」のである。だから結局一個一個ひっくり返して原材料名を確認しなければならない。小さくたくさん書かれている原材料名の中から「酒」の文字を探すのがいつも骨が折れる。
 
 なぜ、小麦・卵・乳などはおもて面に注意書きが書かれるのに、酒だけは書かれないのだろう。こんなに下戸が多いこの国で、なぜ酒に対する注意表示がないのか。飲料には明記することが義務化されているのに菓子類だけ明記しなくてもよい理由は何なのか。「酒」をおもて面の目立つところに明記してほしい。