漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

地図会社は市区町村ごとの地図を作ってほしい

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 最近、こんなニュースを見て、以前から不満に思っていたことを思い出した。
 
 NHKでは、ネットの電子地図に押されて紙の地図が売れなくなった、という分析である。
 
 それもあるだろうが、昭文社の地図が売れなくなった原因は他にもあると思う。
 
 地図には、都道府県単位や「市区町村単位の地図」と、「地続きの地図」がある。
 
 私が子どものころは、本屋で売っている地図帳の多くは市区町村単位の地図だった。「東京都千代田区の地図」とか「新宿区の地図」とか。
 
 しかし数年前に都内の大型書店の地図コーナーに行って驚いたのは、そういう都道府県ごとや市区町村ごとの地図帳が全然売っていないということだった。
 
 今でも畳の上に広げるサイズの一枚の紙だったら都道府県ごとや市区町村ごとの地図というのは売っている。だが、一冊の本になったタイプのものがない。昔はそういう本が売っていた。例えば、「東京都」という地図帳なら1ページ見開きごとに「渋谷区」、「三鷹市」という具合に、市区町村ごとの地図が載っていた。
 
 「地続きの地図」というのは、グーグルマップに代表される電子地図の特徴だ。市区町村ごとの境界線を意識することなく、グリグリとどこまでも辿って行くことができる。これは電子地図ならではの長所だ。
 
 だが、10年以上前から、昭文社が売り出す地図帳はほとんどが、この地続きタイプになってしまった。これより右(東)を見たかったら14ページへジャンプ、これより下(南)を見たかったら36ページへジャンプ、という具合の。紙の本で続きのページにジャンプする使い方は、あまり使い勝手がいいとは言えない。今の地図帳は区の全容を概観できるようにはなっていない。
 
 昭文社のような地図会社は、道路地図にしても然りなのだが、ここ10年ちかく、ずっとそのような地続きの地図帳ばかり作ってきた。グーグルマップに対抗してのことなのかもしれないが、手元のスマホにグーグルマップがある時代に誰が紙の本を見ようと思うだろう。
 
 グーグルマップでは見られないもの、を作るべきだ。そっちのほうが需要はあるはずだ。
 
 それは昔のような市区町村ごとの地図だ。例えば「東京都」という地図帳を作るとすると、大きな区や小さな区があるので、各ページの縮尺が変わってくるという難点はあるが、それでも区ごと市ごとに全容を俯瞰したいと思うことが度々ある。
 
「港区の『赤坂』や『青山』という町の名前を聞いたことがあるけど、二つの町の位置関係はどうなっているんだろう」
 
「渋谷区の『松濤』という町は渋谷区内のどの辺にあるのだろう。区内では大きい町なんだろうか、小さい町なんだろうか」
 
「皇居は千代田区内でどれくらいの面積を占めているんだろう」
 
 あるいは、都道府県の地図だったら、
 
「長野県は長野市松本市が有名だけど、二つの市は県内のどの辺にあって、どれくらい近い、または離れているのだろう」
 
 そういったことを知りたい、と思うことがよくある。だが、今は電子でも紙でも、市や県を概観できる地図というものがなかなか無い。市や県の公式サイトを訪れて見ても、観光情報や生活情報ばかりで、意外と地図というものは載っていない。
 
 地続きタイプの地図ではグーグルマップに勝てっこない。そちらはもうグーグルマップに任せて、地図会社は市区町村ごと、都道府県ごとの地図帳を作るべきだと思う。
 
 因みに、電子化がうまくいっていないのが問題だという分析をしている人もいる。
 
 
 私は、紙でも電子でもいいから、とにかく市区町村ごとであることが重要であり需要があると考える。
 
 それで売上が回復して経営が黒字になるとか、そこまでは私は言えないが、少なくともいま店頭に並んでいる地図帳よりはよっぽど需要があると思う。