漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

2022-01-01から1年間の記事一覧

追悼 渡辺京二

歴史家、思想家の渡辺京二がなくなった。 市井の学者だった。たくさんの著書を残しているが、基本的に役職に就かない人生だったため、その業績に比しては知名度は低いと思う。 「名著」との誉れ高い『逝きし世の面影』は若いころに読んだ。その後も折に触れ…

Twitterの代替が見つからない理由

Twitterがなくなったら困る 自分はTwitterの古参ユーザーの方だと思うがTwitterがなくなったら困る。 と言っても、私はほとんどツイートしない。TLを眺めているわけでもない。Twitterは主に検索ツールとして使っている。つまりTwitterという検索ツールがなく…

【将棋】佐藤天彦九段の反則負けについて

将棋の佐藤天彦九段がA級順位戦において反則負けになったというニュースがあった。 佐藤天彦九段、マスク不着用で反則負け 将棋名人戦・A級順位戦 | 毎日新聞 順位戦における裁定について|将棋ニュース|日本将棋連盟 このニュースに対するコメント(特には…

【将棋】里見香奈さんの“位置”

将棋のプロ編入試験を受けていた女流棋士の里見香奈さんが、0勝3敗の成績に終わり、今回も残念ながらプロ入りを果たせなかった。5番勝負で3勝すれば女性初のプロ棋士誕生となるところだったが届かなかった。 私のような古くからの将棋ファンにとっても、「初…

東京人は東京一極集中に反対している

zauber2011による画像 もちろん、すべての東京人が一人残らず反対しているということはないが。 東京一極集中の問題になると、私たち東京人が批判されたり悪く言われたりすることが多い。おそらく多くの人が、東京人は東京一極集中に賛成/どちらかと言えば…

マイナンバーカードの画像ファイルをアップロードして送信、の滑稽さ

先日、国会図書館の利用者登録をオンラインでやろうとしたところ、本人確認書類の中にマイナンバーカードが入っていてずっこけそうになった。 マイナンバーカード自体は立派な本人確認書類だ。問題はその使い方だ。マイナンバーカードの写真を撮ってその画像…

【書評】堀川惠子『暁の宇品』—読書感想文

評判がよかったので、堀川惠子『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』を買って読んだ。なるほど、高い評判も頷ける内容だった。戦時中の陸軍船舶司令部について圧倒的な調査と資料に基づいて描いたノンフィクションだ。 原子爆弾はなぜヒロシマに落とさ…

日本には「右翼」や「保守」はいない

日本には「右翼」や「保守」はほとんどいない。 と言うと、「いやいやネットを見ればたくさんのネトウヨがいるではないか」と思うかもしれない。確かにネット上にもそしてリアルにも「ネトウヨ」っぽい人はたくさんいる。だが彼らの大半は「右翼」でもなけれ…

子どもたちに漢字の書き方を教える必要はあるか

高校生に、今度漢字のテストがあるから漢字を教えてくれと頼まれ教えた。私自身高校を卒業してから久しいので高校の漢字レベルがどの程度のものなのか忘れていたが、見たらかなり難しい漢字ばかりで驚いた。その高校生は漢字は苦手で小学校レベルでも怪しか…

ある50代男性の人生を通して考える人生の幸福の総量について

congerdesignによる画像 最近、身近で考えさせられることがあった。 職場の男性が急に東京から山形に引っ越した。痴呆症の母親の介護が必要になったためだと言う。山形からリモートで働くのだと言う。 その男性は50代独身。気楽な独身ライフを楽しむというタ…

Walled Gardenから引っ張り出す

「普通にマイナンバーカード持てばいいのに」 こう言う人を最近ネットで見かける機会が増えてきた。恐れていた事態がやって来た。「普通にテレカ持てばいいのに」、「Suica持てばいいのに」の再来だ。 最近のトレンドワードの一つである「Web3」は、GAFAMの…

国会図書館のデジタル化作業の虚しさ

こんな記事を見た。 国会図書館デジタル化のスキャナー部隊の最前線に「国家戦略の本気」が見える「神様たち……」「最後は人海戦術だよな」 - Togetter 特撮ではない。国会図書館デジタル化スキャナー部隊前線基地の威容を見よ。これが国家戦略の本気である。…

あるウクライナ人数学者の生

先月、ある一人のウクライナ人数学者が亡くなった。 この動画の8秒目あたりに一瞬映っている赤い巻き毛の女性。先々月まで生きていたが、2022年3月3日〜8日頃、侵攻してきたロシア軍のミサイルを受けてウクライナの都市ハルキウで亡くなった。弱冠21歳の若さ…

電子証明書のスマホへの格納はマイナンバーカードがなくてもできるように

最近、こういうニュースがあった。 スマホにマイナンバーカード搭載、22年度中にもAndroidで実現へ - ケータイ Watch マイナンバーカードをスマホに入れる、という話自体はもう何年も昔からあったが一向に進んでいなかった。それが漸く2022年度中には実現す…

現代日本の「本」をめぐる危機的状況

本が減っている。本にアクセスできなくなっている。 ウェブ上で文章がたくさん読めるようになった現代でも、本は知にアクセスするための重要なツールだ。 だが現代の日本で、私たちは急激に本を読むことができなくなっている。読みたい本がどうやっても読め…

大学入学共通テスト最低平均点問題から見る日本の世代間格差に対する鈍感さ

令和4年度の大学入学共通テストの数学1Aの平均点が史上最低になったとの報道があった。前身のセンター試験時代を含めて最低とのこと。 共通テ、7科目で平均が過去最低 最終集計を発表、数1・Aなど:東京新聞 TOKYO Web 私はこの問題はもう大分昔から指摘…

【将棋】佐藤康光九段・順位戦の不思議

将棋界に佐藤康光という棋士がいる。いわゆる「羽生世代」の一人で、90年代には名人になったこともある。私の好きな棋士の一人だ。(将棋界には佐藤姓が多いので以降「康光九段」と書いたりする。) この佐藤康光九段の順位戦の成績を見ていて、とても珍しい…

18歳以下10万円給付批判

こんなふざけた政策はない。 10万円は子どもに渡されるわけではない。実際に受け取るのは親だ。結婚もできて子宝に恵まれている人が10万円を受け取れて、結婚もできず子どもも持てない恵まれない人が10万円を受け取れないなんて、そんなあべこべな話があるか…

COVID-19対応に見る日本人のイン意識とアウト意識のアンバランスさ

jacqueline macouによる画像 COVID-19にかかる対応、特にオミクロン株の急速な蔓延に伴う対応で、岸田総理が外国から日本への入国を全面禁止にしたことが「英断」だとして多くの国民から拍手喝采を浴びた。 「現代の鎖国だ」と言う人もいた。だが、私はそう…