漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

6つの個人間送金アプリ比較一覧(2019年版)

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(※2019年5月時点のまとめです。公式サイトで最新の情報をご確認ください。)
 
 日本で使われている個人間送金サービスアプリ6つをピックアップして、それぞれの特徴、メリット、デメリットを調べてみました。比較するのは、
 
 
の6つです。
 

個人間送金とは?

 個人間送金とは、個人間(たとえば親から子へ)でお金を送ることです。これら6つのサービスはスマホアプリで使います。iOS、AndroidOSともに対応しています。従来は離れた所に暮らす親から子への送金は銀行振込が一般的でしたが、これらのサービスを使えば振込手数料なしに送金することができます。
 
 わかりやすいように比較表を作ってみました。
 

【チャージ方法比較】

 

◇銀行口座について
 LINE Payが最も多くの銀行に対応しています。Kyashは銀行口座からのチャージには対応していません。
 
◇チャージ方法の多さについて
 ご覧のように、LINE PayとKyashが多様なチャージ方法に対応しています。LINE PayはファミマでQRコードでもチャージができ、Kyashはクレカ、デビカ、ペイジーでのチャージに対応しています。
 
 

【チャージ限度額、送金限度額、手数料の比較】

 

 

◇チャージ限度額について
 Money Tapは銀行口座から銀行口座への直接の送金となり、「チャージ」という行程はありません。
 
◇送金限度額について
 現時点ではJ-coin Payがもっとも多く送金できそうです。
 
◇送金手数料について
 基本的にどこも無料です。
 
◇出金手数料について
 「出金」とはアプリの中のお金を自分の銀行口座に送って現金化(紙幣化)することです。pringとJ-coin Payは無料です(※pringは1日1回まで)。KyashとPayPayは出金できないので、電子マネーとして買い物する形で使います。
 
 

各サービスの特徴、メリット、デメリット

LINE Pay
<特徴> 
  • QRコード決済でもお馴染み。LINEの登録とは別にLINE Payへの登録が必要
<メリット>
  • 大手銀行が対応している
  • 相手も使っている可能性が高い。LINEは普及しているので他人にも薦めやすい
<デメリット>
  • LINEアカウントが必要
  • 出金手数料がかかる
 
Kyash
<特徴>
  • 基本的には前払式支払手段発行業。簡単に使い始めることができる分、現金化はできない
<メリット>
  • 使い始めるまでの手間が少ない
  • チャージ方法が多様
  • デビットカードも登録できる
<デメリット>
  • 銀行口座紐づけができない
  • 出金ができない
 
pring
<特徴>
  • タップス系。銀行口座紐づけの送金で仕組みはシンプル
<メリット>
  • 出金手数料が無料(1日1回まで)
  • 仕組みがシンプルでわかりやすい
  • ネット銀行が多数対応している
<デメリット>
  • ゆうちょ、三菱UFJの大手2行が利用できない
 
Money Tap
<特徴>
  • SBIリップルアジアが手がける。チャージという形を取らず、自分の銀行口座から相手の銀行口座へ直接の送金となる
<メリット>
  • 送金する相手がMoney Tapアプリを使ってなくてもよい
  • お金がスマホに滞留しないので紛失リスクがない
<デメリット>
  • 今のところ対応している銀行がほとんどない
  • 支払いには使えない
 
PayPay
<特徴>
  • ソフトバンクとヤフージャパンが手がける。個人間送金サービスより決済サービスの方が話題
<メリット>
  • ゆうちょ銀行が使える
  • 相手も使っている可能性が高い
<デメリット>
  • Yahooウォレット、Yahoo JAPANカード等との連携が必要で仕組みが複雑
 
<特徴>
<メリット>
  • 地方銀行が多く参加している
  • 出金手数料が無料
<デメリット>
 
 

まとめと感想

 まだ始まって日の浅い個人間送金サービスですが、今のところ、LINE Pay、Kyash、pringの3つが力を入れている印象です。LINE Pay、Kyash、PayPayあたりは、決済サービスの方も力を入れているので、送金されたお金をそのまま使える店が多いです。Yahoo JAPANのIDを持ってる人はPayPayでもいいかと思います。pringはセブン銀行ATMで出金できる点が大きな利点です。
 
 pringとMoney TapとJ-coin Payは仕組みがシンプルでわかりやすいです。特にチャージという行程すらないMoney Tapは個人間送金という目的から言えば一番シンプルなサービスなので、J-coin Payもそうですが、今後、提携銀行が増えて行けば魅力的なサービスだと思います。
 
 今後は、d払い(NTTドコモ)やプラスメッセージ(大手携帯キャリア3社)、Bank Pay(J-Debit)あたりも個人間送金サービスに参入してくるかもしれません。
 

世界コンピュータ将棋選手権を観ての感想

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 ゴールデンウィーク中に開催されていた第29回世界コンピュータ将棋選手権を観た。観たと言っても会場まで行ったわけではなく、ネットで一部を観戦しただけだが。
 
 観ていろいろ思うところがあった。一つは、相入玉の将棋について。もう一つは、AI(人工知能)の考える範囲について。
 
 私は「将棋ソフト」が「将棋AI」なのかどうか解っていない。つまり、「将棋ソフト=将棋AI」と言っていいのかどうか。ネットでざっと見たところ、コンピュータ将棋ソフトのことを「将棋AI」と表現しているものが多々見つかるので、この記事でも「コンピュータ」と言ったり「ソフト」と言ったり「AI」と言ったりする。
 
 

入玉の将棋の捉え方について

 コンピュータ同士の将棋では、やたらと相入玉の将棋が出てくる。「相入玉」とはお互いの王様が相手の陣地に入ってしまってなかなか捕まらない形になる将棋のことである。この相入玉の将棋は人間同士の対局ではそんなには出てこないが、コンピュータ将棋選手権ではよく出てきた。
 
 で、この相入玉の将棋のことを「(将棋とは違う)別のゲーム」と言う人がいる。プロ棋士でもそのように言う人は多い。相入玉になると、もう相手の王様を詰ますことはできないので、点数勝負になる。駒をたくさん持っていた方が勝ちになるので、とにかく駒をたくさん取ることを目指す。つまり、将棋とは本来、相手の王様を詰ますことが目的のゲームである、しかし相入玉の将棋は相手の王様を目指さず、駒をたくさん取ることを目的としてしまっているので(本来の将棋とは)別のゲームである、というわけだ。
 
 だが、この「別のゲーム」という感覚はおそらく人間だけが持っている感覚だろう。コンピュータは「別のゲーム」とは思っていないはずだ。人間は相入玉を「特殊な形」と思っているが、コンピュータはそうは思っていない。どんな形であれ、それが将棋のルールの範囲内なら、当然思考対象の内である。最後に駒の数が点数になるというルールがあるのなら、初めから駒の数を考慮しながらゲームを進めて行くだろう。
 
 もし、「それは“本来の”将棋ではない!別のゲームだ!」と感じるなら、わたしたち人間は、相入玉の将棋に関してルールの再考を求められていると言えるだろう。
 
 

AIの「役割」の範囲について

 大会を観ていて感じたもう一つのことは「千日手」が多いということだった。千日手というのはお互いに同じ手を繰り返すことで千日経っても終わらないことからその名が付いている。人間同士の対局ではあまり発生しない。どちらかが折れなければしょうがないので、普通はどちらかが妥協して手を変える。どちらも意地を張って手を変えなかった場合はその対局は終了となり、あらためて初手からの指し直しとなる。
 
 コンピュータの場合は「空気を読んで妥協する」ということもないし、常に最善の手を指そうとすればお互いに同じ手を繰り返してしまうのかもしれない。大会では、千日手は指し直しではなく、引き分け扱いになるルールだった。勝ちが1勝、引き分けが0.5勝、負けが0勝である。
 
 で、問題は決勝リーグで起こった。
 
 6回戦を終わった時点で「やねうら王」というソフトと「Kristallweizen(クリスタルヴァイツェン)」というソフトが5勝1敗の成績で並んでいた。他に5勝しているソフトは無く、優勝はこの2者に絞り込まれていた。
 
 最終7回戦は、このやねうら王とKristallwezenの直接対決だった。つまり決勝戦である。勝った方が優勝、負けた方が2位。では、引き分けたらどうなるのか。その場合は他の細かい条件の点数によって順位が決まる。サッカーW杯で言うところの得失点差とか総得点数とかそういう感じの点数である。この細かい点数がやねうら王の方が上回っていたため、引き分けた場合はやねうら王の優勝となることが決まっていた。
 
 そこで、やねうら王の作者は、決勝戦前にチューニングを行い、ソフトに積極的に千日手を指すように“指示”を出した。この調整が見事的中し、決勝戦は短手数で千日手が現れ、勝負は引き分けとなり、やねうら王はみごと優勝を飾った。
 
 千日手引き分けによる優勝、というこのあっけない幕切れに、やねうら王作者の戦略に感心するとともに、Kristallweizenの作者は何をやっていたのか、とも思った。やねうら王は二次予選と決勝リーグで二度、Kristallweizenと戦ったが一度も勝てなかった。それなのに優勝したのである。
 
 将棋に勝つことと大会に勝つことは別だということである。
 
 私が感じたのはソフトが考える範囲の「広さ」についてである。
 
 この大会で二次予選以上に残るようなソフトは、どれも「深さ」についてはものすごく深く読んでいる。数億手とか10億手も手を読んでいるらしい。超優秀である。
 
 私は、そんな超優秀なソフトが「引き分けたら(千日手を指したら)優勝できない」という、この程度の簡単なことを理解していなかったことに衝撃を受けた。
 
 千日手を指したら「負け」ではなく「引き分け」である。それは当該対局のみについて言えばその通りである。だが、「大会」として考えた時には、それでははっきり「優勝」を逃す。
 
 将棋の目的は目の前のゲームに勝つことだが、大会参加の目的は優勝することである。
 
 このような状況は二次予選でも現れた。2つのソフトが最終戦で戦って、引き分けてしまったらかなりの確率で2者とも決勝リーグに進めない可能性が高かったのに、お互いに千日手を指してしまった。(他のソフトの成績の関係で1者はたまたま運良く決勝リーグに行けたのだが。)決勝リーグに進むのが大事なことなのだから、千日手は避けるべきところである。避けたら自分が不利な局面になって負ける可能性も出てくるが、引き分けで決勝に進めない確率の高さにくらべたらマシである。
 
 勝敗数が並んだ時の他の細かい点数計算は、それほど複雑なものではない。人間にでも計算できるものである。そしてそれを計算したら自分が今何位なのか、次の対局で引き分けてしまったら優勝はできない、なんてことは、人間だったら特別に頭の良い人ではなくても普通レベルの頭の人でも解ることだ。
 
 それを、その程度のことを、10億手も先を読めるソフトが自分で判断できない。
 
 そういう「大会に優勝するためにはどうすればいいか」という部分もソフトに考えさせるべきではないか。
 
 それとも今のAIはまだそのレベルに達していないのだろうか。
 
 これはまるで飼い主の人間と飼い犬の関係のようだ。
 
飼い主「ウチの犬はとっても賢いんですよ〜。すごい複雑な計算だってできちゃうんだから」
 
犬「ご主人様。考えたのですが、この大会で優勝するためには、、」
 
飼い主「うるさい!おまえは余計なことは考えないで目の前のゲームに勝つことだけに集中してればいいんだよ。大会で優勝するための戦略とかそういうことは私が考えるから」
 
犬「……」
 
 大会のルールの中に「ソフトは将棋のことだけ考えて、大会全体のことを考えさせてはいけない」というルールでもあるのだろうか。
 
 これからの時代のAIは「深さ」よりも「広さ」を考えていくべきだと思う。将棋ソフトはもしそこにAI(人工知能)があるのなら、将棋のルールだけを理解するのではなく、大会のルールも理解して、大会で優勝するためにはどうしたらいいか、という戦略も自ら考えるべきだと思う。
 
 ということを、世界コンピュータ将棋選手権を観て思った。
 
【関連記事】

旧公衆衛生院に行ってきた

 改元に伴う10連休のゴールデンウィーク。どこにも行かないつもりだったけど、近場でお金もかからなくて人も少ないところだったらいいかな?と思って、港区立郷土歴史館(旧公衆衛生院)に行ってきました。
 
 東京メトロ南北線都営三田線白金台駅を降りてすぐのところにありました。
 
 建物自体はかなり昔からあるのですが、2002年までは公衆衛生院として使われていたので部外者は入れず、港区立郷土歴史館としては昨年2018年にオープンしたばかりで、東京人の間でもあまり知られていない感じの建物です。
 
 左の門は東京大学医科学研究所附属病院。右側が旧公衆衛生院の入り口。

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 見えてくる建物。f:id:rjutaip:20190510205450j:plain
 
 左側に回り込むと正面が見えてきます。

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 この建物は本郷東大の安田講堂を作った内田祥三が手がけた建物だそうで、重厚な建物です。
 
 正面から中へ。入館料300円を払って建物内部を見学。
 
 主な見どころは、建物そのものと常設展(港区の歴史等)と企画展です。私は建物を見るのが目的だったので企画展のチケットは買いませんでした。
 
 気づいたことは、無駄に係の人が多いということ。そして係の人というのは大抵、「そこは立ち入らないでください」とか「それは触らないでください」とか細かく口うるさく言って来るイメージがありますが、ここの係の人たちはそういう感じではなく、皆やたらと案内などが丁寧でした。
 
 中央の吹き抜けのところ。

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 皆、写真を撮っていました。基本的には写真を撮っていけないところは少なく、立ち入り禁止の部屋などは開けようとしても鍵がかかって入れないように始めからなっており、見学中にいろいろ口うるさく言われなかったのが良かったです。
  
 階段もなんか楽しい。この写真は2枚の写真を真ん中でつなぎ合わせているように見えますが、一枚の写真です。

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 見どころの一つ。趣のある講堂。

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 迷路感がある廊下。子どもの時にここに来ていたら10倍くらい亢奮していると思う。

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 館内をいろいろ歩いていると、相当、年代物と思われるエレベーターの遺跡を発見。

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 ボタンの上に何か書いてある。

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此ノ釦ヲ押セバ乘籠ガ來マス。
乘籠ガ止マツテカラ扉ヲ開ケテ
御乘リ下サイ。
運轉中ハ釦ヲ押シテモ無駄デス。
(このボタンを押せば乗り籠が来ます。
乗り籠が止まってから扉を開けて
お乗り下さい。
運転中はボタンを押しても無駄です。)
 
「運轉中ハ釦ヲ押シテモ無駄デス。」
 
「無駄デス。」
 
 何だこれ。最後の一文がめちゃくちゃ面白くて笑ってしまった。もう、こんなのを発見できただけでも、来た甲斐があった。それにしても、昔のエレベーターは手動で扉を開けていたのか。こんなエレベーターが今でもあったら最高なのに。
 
 他にも、オーガニック(?)な感じのお洒落なカフェもありました。

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(他の客がいたため、全景は撮れず。)
  

まとめ・感想

 建築に造詣の深い人だったらもっと細かいところにたくさん気づくでしょう。

 この記事では省略しましたが、各部屋が常設展示室になっており、いろいろ港区の歴史を学ぶことができます。図書室もあり、そこは普通に読書することもできます。

 トイレなどは改装されて今どきの綺麗なトイレになっています。(ただし昔のトイレを使ってみたかった気もする。)

 あと、休憩室とかいろいろなところに手洗い台が残っていて、さすが公衆衛生院、と思わせてくれます。

 一つ一つの調度品も美しく、こんな所に住んで学んでいた当時の学生が羨ましくなりました。

 この建物を取り壊さず、活用する方向に動いたのは賢明だったと思います。

 

 昨年2018年にオープンしたばかりであまり知られていないせいか、ゴールデンウィークにもかかわらず人は少ないし、300円だし、かなり満足でした。

 

女性の「おいしそう」=「食べたい」に気付かなかった話

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 もう、だいぶ昔の話。
 
 女性とデートをした時のこと。残念ながら恋人ではなく親戚の女性だったので、所謂「デート」ではないのだが。
 
 親戚の女性が上京してきたので、私が一日街案内をすることになった。当日、私は街や建物の歴史や由来などの話をしながら、なるべくその女性が退屈しないようにしながら二人で歩いていた。
 
 歩いている途中に女性が通りすがりの飲食店や菓子店などの前で、「ねえ、あれおいしそうじゃない?」と言うことが何回かあった。
 
 私は「そうだね。おいしそうだね」とだけ言って、そのまま歩みを止めずに再び歴史の続きを話し出した。
 
 その「おいしそう」が「食べたい」だとは思わなかった。
 
 私は「おいしそうだね」は、「おいしそうに見えるね」ということだと思っていた。そう言われれば確かにおいしそうには見えるので、「うん。そうだね、確かにおいしそうだね」と答えていた。
 
 私は「この一帯は元々、◯◯家の屋敷があった所で…」とか、「ここら辺の町名は江戸時代には◯◯と言って、その由来は…」というような話をしていたが、その女性は歴史にはあまり興味がなかったようで、私の話には「ふーん」とか「へー」と相槌を打っていて、それで歩いている途中にときどき「あ!あれもおいしそうじゃない?」と言うのだった。
 
 食べ物にあまり興味がない私は、指さされた方向を見て、なるほど確かにおいしそうには見えるな、と思って「そうだね。おいしそうだね」とだけ返事して、ことごとくそういった店の前を通り過ぎて行った。
 
 あのデート中に何回か発せられた「あれ、おいしそうじゃない?」が「食べたい」の意だったのだと私が気づいたのは、後日になってからのことだった。「食べたい!」、「いっしょに食べていこう!」と言ってくれれば、もちろん一緒に食べてよかったのだが…。
 

マイナンバー制度が普及しない理由

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 マイナンバーの利用率が0.1%というニュース。
 
 因みにここでは、マイナンバー(番号)とマイナンバーカードを合わせて「マイナンバー制度」と言う。
 
 マイナンバー制度が始まってもう三年近く経つが、なぜ全然普及しないのか。
 
 それは「狙い」が無いからだ。私も当初は、国の「野望」や「陰謀」と言ったら大袈裟かもしれないが、「狙い」があるだろうと思っていた。
 
 マイナンバー制度の「狙い」は、とりあえず簡単に分かるものはある。「徴税」だ。これは国民の誰もが思っているだろう。「税金を厳しく取り立てたいから国はマイナンバー制度を作ったんでしょう」とみんな思っている。
 
 だが、それ以外の狙いが見えて来ない。
 
「国が国民を監視する社会を作りたいんでしょう」
 
と思ってる人も多いかもしれないが、その監視の動きもなかなか進んでいない。
 
 一般的にマイナンバー(番号)は行政側の話で、マイナンバーカードは国民側の話だが、今のところ普及してないのはマイナンバーカードだけでなくマイナンバー(連携)の方も普及していない。裏でマイナンバーの連携をいろいろ進めればもっと管理・監督が進むだろうにそれもしていない。
 
 国民がマイナンバー制度を利用しない理由は簡単で、一つは個人情報が筒抜けになりそうで怖いというもの。もう一つはマイナンバーカードを取得するメリットが今のところコンビニで住民票の写しが取れる、といった程度しかないというもの。
 
 一方、国がマイナンバー制度を普及させない理由は何なのだろう。質問すれば「国民の理解がなかなか得られないから」とか「国民のあいだでマイナンバーに対する拒否感が強いから」などといった答えがかえってくるだろう。
 
 だが、おそらくそうではない。
 
 国がマイナンバー制度を積極的に普及させない理由、それは「ビジョン」がなかったからだ。「ビジョン」は「狙い」と言ってもいいし「目的」と言ってもいい。すなわち、「マイナンバーを使ってこういう社会を実現したい!」とか「マイナンバーカードを使ってこういうことができる世の中にしたい!」だとか、そういう具体的な夢や希望が無かった。
 
 ではなぜ国はマイナンバー制度を作ったのか。
 
 それは「諸外国もそうしていたから」だ。
 
 米国、韓国、ヨーロッパなどの先進国には皆、個人番号制度がある。実際、今から十年以上前の話だが、ヨーロッパまで視察に行っていたりしたようだ。そうしてそれらの先進国の有り様を見て、「我が国も遅れをとるわけにはいかない」、「先進国の中で個人番号制度がないのは日本だけ。恥ずかしい」、そういう気持ちからマイナンバー制度を作った。
 
 で、試行錯誤の上、なんとか作り上げることに成功した。ホッとした。これでもう先進諸外国から「おたくの国には個人番号制度は無いんですか?」と馬鹿にされずに済む。「うちの国にもマイナンバー制度という立派なものがあります」、「日本のマイナンバーカードのICチップには最新のテクノロジーが使われているんです」と胸を張ることができる。
 
 完成してホッとしたところで止まってしまったのだ。
 
 もちろん大事なのはその先の運用、利活用なのだが、どのように活用したらいいのか分からない。
 
 そもそも作り始めのきっかけが「マイナンバー制度を作ってこういう社会を実現したい」ではなく、「どうやら海外の先進国には、だいたい何処も個人番号制度というものがあるらしい。日本だけ無いのはやばいんじゃないか」というところから始まっているので、制度ができた時点で目的も果たしてしまったような感覚になっている。その先の活用方法は分からないし、あまり興味もないのだ。
 
 国民がマイナンバー制度について詳しくなかったり関心がなかったりするのは致し方ない面もあるが、国がマイナンバー制度の活用の仕方を分かっていないのでは、ほんとうに「一応、作りました。使ってはいませんが」というものになってしまう。
 
 デジタルファースト法案でも「すべての手続きはデジタルでもできるように」という当たり前のことが言われているだけで、マイナンバー制度の具体的な利活用の道筋は示されていない。(もちろん当たり前のことだけでもやらないよりはマシだが。)
 
 マイナンバー制度は当初はもっとたくさんの利活用計画があった。ところがここ一、二年、それらの計画の話もまったく耳に入ってこないようになった。
 
 どうしてこうなってしまったのだろう。
 
 これも私の推測だが、マイナンバー制度を作っている時に参画していた外部の人たちが、制度の完成とともに去って行った。そこで残された政治家と官僚たちが「で、このマイナンバー制度っていうやつは、どうやって使えばいいんですか?」と困惑しながら立ち往生しているのが今なのではないか。
 
 大雑把にはそんな感じなのではないか。
 
 技術的なことに留まらず、利活用方法についても、外部の人に指示を仰ぐべきなのではないか。「そんなことは政治家がやるべきことで、外部の民間の人間が口出しするべきことではない」と言うかもしれないが、それなら尚更、政治家たちはマイナンバー制度の具体的な利活用をもっと早急に進めていく必要がある。
 
 このような状態を長く放置しておけば、国民からは「マイナンバー制度はやっぱり失敗だったね」と、どんどん過去形で語られてしまうだろう。
 
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電化製品のスイッチが入ったのがわかる人

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 私は家電などのスイッチが入ったのがわかる。隣の部屋に居たりしても。
 
 これが珍しいことなのかどうかわからない。ネットで検索してみたら一人だけ見つけて、ああ、自分以外にもいるんだ、と思った。
 
 因みに、隣の部屋のテレビやパソコンが「点いている状態にあることがわかる」という人は結構いるらしい。音を完全に消していても、普通の人には聴こえない音域の音が聴こえているからわかるのだそうな。
 
 私の場合は「点いていることがわかる」のではなく「点いたことがわかる」。電源が入ったことがわかる。すべての家電がわかるわけではなく、いちばんわかりやすいのは電子レンジや掃除機。
 
「音がするからでしょ?」
 
 そうではない。電子レンジのスタートボタンを押したら確かに「ブーン」という音を立ててレンジが回転しだす。掃除機も大きな音が出始める。だが、その音が聴こえてくるよりも先にスイッチが入ったことがわかるのだ。
 
「見えてるからでしょ?」
 
 自宅内の隣の部屋やマンションの隣の部屋ぐらいまではわかることもある。二つ隣の部屋くらい離れると、さすがにわからないが。
 
「スイッチを押す音が聴こえてるんでしょ?」
 
 それは聴こえていない。
 
「不思議な能力?」
 
 自分でもなんでわかるのか考えてみたが、不思議な能力というわけではなく、光が見えているのだ。電化製品はスイッチが入った時(電源が入った時)に一瞬、光を発する。ただ、それはあまりにも短い刹那の閃光なので大抵の人は気づかない。私も気づくときと気づかないときがある。
 
 ちょうど雷が落ちる時にカーテンを閉めていても部屋の中に一瞬、光が走る感じと似ている。(音が遅れてやってくるところも。)ただ、雷の光は誰でも気づくが、電化製品の場合は、光る時間が短いのか、それとも光の量(?)が小さいのか、気づくことは難しい。
 
 電子レンジ、掃除機以外だと、冷蔵庫、エアコン、テレビ等、比較的大きなものが気づきやすい。(冷蔵庫は運転している時と休んでいる時がある。その運転し始める時に光を発する。)スマホの電源は入っても気づかない。おそらく大きい物はそれだけ強い光を発しているのだろう。
 
 本当に目で「見えた」とは言えないくらい短い瞬間、光が走る。それで気づく。音速はとても遅いので、その閃光にくらべれば、だいぶ後から掃除機などの「ウィーン」という音が聴こえてくる。窓が閉まっていたり部屋の壁が厚い場合などはもちろん音は聴こえないこともある。それでも光によって隣室の何かの電源が入ったということだけはわかる。それがテレビなのか電子レンジなのかというところまでは判らない。
 
 子どもの頃からよく気づいていたし、大人になった今でも電化製品のスイッチが入ったのがわかる。それがわかったところで別に得することは何もないのだが…。
 
 で、世の中には結構こういう人はいるのだろうか。それとも珍しいのだろうか。「私もわかりますよ」という人がいたらコメントください。
 

Twitter10年で使い方が変わった

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 今年でTwitterを使い始めてから10年になる。
 
 最初の頃にくらべるとTwitterの使い方も随分変わってきた。皆さんはTwitterをどう使っていますか?
 
 Twitterの使い方はたぶん次にあげるような使い方が考えられる。
 
・タイムラインを見る、読む。たまにリツイートしたり、いいねしたりする。
・何事かをツイートする。
・リプライで会話をしたり連絡を取ったりする。
・他サービスのログインアカウントとして利用する。
・トレンドやニュースを見る。
・検索する。
 
 私はリプライで会話というのはほとんど無いが、最初の頃は、上二つが多かった。つまり、自分がツイートするか、他人のツイートを読むか。
 
 だが最近は、下二つ、トレンドを見たり、特に検索に使うことが多くなった。
 
 昔、ウェブ上にはさまざまな検索エンジンがあったが、すべてグーグルの前に敗れて行った。Twitterの検索機能が今も生き残っていて重宝されるのは、明らかにグーグルの検索とは違った価値を提供できているからだ。
 
 例えば、私は朝、山手線が動いているかどうかをTwitterで検索して確認する。遅延が発生していればJR東日本の公式サイトにも情報は載るが、それはかなり遅い。グーグルで「山手線」で検索してもJRやウィキペディアのようなサイトが検索結果に出てくるだけだ。山手線が遅延していないかどうかを一番手っ取り早く知ることができるのはTwitterの検索である。「山手線、止まった・・・」とか、そういうツイートがどれくらいのボリュームで登場するかによって、遅延の“重さ”を測っている。遅延情報をキャッチしたらすぐに地下鉄に手段を切り換える。山手線は乗客数が多く、Twitter利用者がたくさん乗っているからこそできることでもある。
 
 他にも、例えば、ある製品のテレビCMを初めて流した時に、どれくらい世間の反応があるか、好意的か非好意的か、なんてこともTwitterの検索でこそ分かる。
 
 「まさに今」のことを知りたい時にグーグルは使えない。昔はグーグルもリアルタイム検索っぽいことをやっていた時期もあったようだが今はやってない。
 
 「ある会社のことについて知りたい」というような時も、その会社名でTwitterで検索すると、ググった時とはかなり違った情報が得られる。Twitterの検索機能はある種の口コミ、評判検索であるとも言える。
 
 「リアルタイム性が高い」ということと「世間の反応がわかる」という二点が、グーグルにはないTwitterの検索機能の価値だと思う。
 
 また、Twitterアカウントはグーグルアカウントと並んで、他サービスへのログインアカウントとして利用できることも多くなった。それだけ広く人口に膾炙しているということだろう。
 
 10年前、Twitterを使い始めたころは、他人のツイートを読むのも自分がツイートするのも新鮮でおもしろかった。しかし初期の頃にフォローしたおもしろい人たちは、その後Twitterから居なくなってしまった。おもしろい物を見つけるのが早い人たちは見切りをつけるのも早いということか。
 
 私は今では、Twitterを開く目的の8割ぐらいは検索目的になっている。皆さんはどうですか?
 
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