地方に大学を
政府が大学の東京一極集中を是正するための諮問機関を昨年2017年に設けた。
こうした政府の動きに対して批判の声は多い。
一番多く聞くのは「地方には仕事がないんだから大学を卒業してから結局は東京へ行く」という声。
もう一つよく聞くのは、1990年代に東京の大学が郊外へキャンパスを移転した結果、人気がガタ落ちした、という例を引いて、「キャンパスは都心にあったほうがいい」という声。
しかしこれは、「東京の郊外」と「地方」を混同している。東京の大学を東京圏の郊外に移転するのと、地方に大学を作る話は別だと思う。
私は「地方に大学を作ろう」という意見には賛成である。東京への過剰な一極集中の是正は、かなり昔から議論されているものの、一向に改善する気配がない。
東京への人口の集中が進むのは地方の人が東京にたくさん移り住むからである。しかし移り住むと言ってもそう簡単には引っ越せない。大部分の人にとって、人生で東京に移り住むきっかけになるのは、大学受験と就職、結婚の時だろう。となれば、この「三大きっかけ」を見直すことが東京一極集中の是正に繫がる。
地方に仕事を創出することも大事だが、大学を地方に作ることも大事である。例えば、地元にまともな大学が県名を冠した国立大学一校しかなくて、その一校に行くか若しくは東京の大学に行くか、という選択肢を迫られている人はいっぱいいると思う。東京の大学に進学すれば、東京で「縁」もできる。人との繋がり、コネクションができ、人によっては東京を離れられなくなる。実家の「家業」がある人は別だが、特段、家業もない人は、このまま東京で就職してもいいか、という考えにもなろう。「引っ越す」ということは「機会」や「縁」がなければなかなかできないことだ。
また、東京の大学に進学すれば、そこで出会った人と恋に落ちたり、結婚などという話になることもあるだろう。相手が東京近郊の人だったら、ますます東京で結婚生活を送る可能性は高くなる。
先日、政府が、今後10年間、東京23区の私大の定員を増やさない、という法律を閣議決定した。このニュースに対して、私の見たかぎりでは、「バカじゃないの」というような批判的なコメントが多かった。「そんなことをしたら東京の大学の受験競争が激化する」というコメントも見た。だが、東京の大学の定員を絞るのではなく、あくまでもこれ以上増やさないというだけなのだから、激化するはずはない。少子化の今の時代に、東京の大学の定員をこれ以上増やしたら、地方の小さな大学はなかなか太刀打ちできない。
地方の大学は、◯◯芸術大学、◯◯経済大学、◯◯工科大学のような専門の大学が多い。高校生の時点で進路が決まっている人ばかりでもないと思うので、もっといろんな学問が学べる総合大学があってもいい。
「東京一極集中に何か問題でも?」と言う人もいるが、私は東京一極集中には反対である。効率を優先させて地方を衰退させてよいはずがない。地方の都市にも村にもそれぞれ掛け替えのない文化がある。少子化は確かに厳しい試練だが、だからといってそんな簡単に地方を諦めてはいけない。
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