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漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

関西人はなぜ「箱根駅伝は関東ローカルなのに」と言うのか

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 正月に箱根駅伝を観るのを楽しみにしている。

 ところで、箱根駅伝の時期になると、

 「箱根駅伝は関東ローカルの大会なのに」
 という声を毎年聞く。
  主に関西人の口から発せられることが多い気がする。(※気がするだけ。統計なし)
  今日は、東京人の私が、この言葉が半分正しくて、半分間違っている理由を書こうと思う。
 

箱根駅伝は大学日本一を決める大会ではない

 箱根駅伝は、関東地方(と山梨県)の大学だけが参加できる大会である。それ以外の地方の大学は予選会に参加することもできない。 
 大学日本一を決める駅伝としては、毎年11月に開催される「全日本大学駅伝」というものがある。こちらは文字通り全国の大学が参加でき、日本一を決める大会である。
 なので、この意味において、「箱根駅伝は関東ローカルの大会」と言うのは正しい。
  

全国的に盛り上がる箱根駅伝

 しかし、関西人が「箱根駅伝は関東ローカルなのに・・・」と言う時には、関東の大学しか参加できない、という事実以外の言外の意味があるように思われる。

 「関東ローカルの大会が、なぜ全国区のような扱いを受けているのか」、「なんでテレビや新聞は、正月の“日本全国の”風物詩のように言うのか」 
 そう言いたげに聞こえる。 
 関東ローカルの大会が、まるで日本一を決める大会のような扱いを受けていること、そして日本中が箱根駅伝に熱狂しているかのような伝えっぷりに関西人は違和感を感じている。 
 しかし、人々の受け止め方という観点から言えば、箱根駅伝は決して「関東ローカル」ではないのである。 

 

東京の大学には全国から人が集まる

 箱根駅伝は「関東ローカル」なイベントではない。

 その理由は、東京の大学の卒業生が日本中にいるからである。
 九州や東北地方にも、東京の大学の出身者がたくさんいる。今は九州に住んでいるけれども、東京の大学の出身であるとか、自分は違うけど家族が、親戚が、中央大学早稲田大学日本大学の卒業生だから身近に感じて応援している、という人はいっぱいいる。決して、自分とは無縁な地域の無縁な大会というわけではない。 
 東京の大学には全国から人が集まる。 
 これは箱根駅伝を走っている選手の出身高校を見てもわかる。全国各地の高校から集まっている。箱根を走るような学生はスポーツの優秀な高校から集められているかもしれないが、そうではない一般の学生も、やはり全国各地から集まっている。 
 私は東京の比較的大きな大学に通っていたが、自分の大学時代を思い返しても、やはり全国から学生が集まっていた。が、日本全国から満遍なく、というわけではなかった。一番多いのは、もちろん地元の東京と、神奈川、埼玉、千葉の出身者。それから北関東、新潟、長野、山梨、静岡の出身者が多くて、それから、九州や東北など全国各地の出身者。
  一方で、関西地方と愛知県の出身者は少なかった。必ずしも、東京から同心円状に、つまり、東京から近い地域ほど多くて遠くなるほど少ない、というわけではない。 
 関西や愛知県から来ている学生が少ないのは、「地元に大学がたくさんある」からだ。東京大学とか特別な大学に行くならともかく、普通の私立大学なら地元にもたくさんある。わざわざ東京まで行く必要もない。
 特に関西の京阪神エリアには、歴史のある大学もたくさんある。関西の大学は関西地方を中心とした地元出身者が多く、東京の大学のように全国から学生が集っているわけではない。
 

関西以外の地域にはそんなに大学がない

 一方で、東京圏と関西圏を除けば、大学がたくさんある地域というのはあまりない。 
 名古屋、福岡、仙台、札幌などの一部の都市を除けば、日本の大半の地域には選べるほどの大学がない。 
 で、そういう地域の高校生は地元の一校しかない大学に行くかさもなくば東京の大学に行くか、という選択を迫られる。東京の大学に東北や九州出身の学生が多いのもこのためだ。
 

関西には強大な文化がある

 関西には強大な文化がある。 
 大学もたくさんある。企業もたくさんある。だから、生まれてから死ぬまで、地元の小、中、高、大学を出て、地元の会社に就職して、一生関西から出ないで人生を過ごすこともできる。 
 しかし、こんなことができる地域は寧ろ少ないのだ。全国の大抵の田舎は、ここまで自前で揃えることはできない。 
 関西は学校や企業の数が多いだけでなく、娯楽についても独自の豊かな文化がある。関西のテレビには関西人だけが楽しむ娯楽がいっぱいある。箱根駅伝なんか見なくても、他に楽しいものがいっぱいある。
 

箱根駅伝は関西以外の「全国区」

 しかし、他の地域はそうはいかない。
 娯楽が少ない。東京発の「箱根駅伝」の観戦は、貴重な娯楽である。しかも、家族や親戚など身近にたくさん、出場校のOB、OGがいる。テレビをつけて、「あ、叔父さんの大学だ!」「お姉ちゃんが行ってた大学だ」と言って盛り上がる。東京の大学のOB、OGが極端に少ないのは関西地方だけの特徴であり、身近に出身者がいなければ盛り上がらないのも当然だろう。 
 つまり関西人は、「関西ローカル」と線対称で鏡に映したように「関東ローカル」というものが存在すると思っているが、そのような「関東ローカル」は存在しないのである。
 東京の大学の出身者は全国に居るため、箱根駅伝は「全国区」なのである。寧ろ、関西のほうが、そのような全国的盛り上がりから仲間外れ的、ローカル的に「孤立」しているのである。 
 「孤立」と言うと聞こえが悪いが「独立」と言えば格好良く聞こえる。東京を中心とした全国的な楽しみとは別に私たち関西人は関西だけの楽しみがあるんですよ、ということだ。 
 関西人はここで私が指摘しているようなことは分かっていて、敢えて関西の誇りを強調したくて「箱根駅伝は関東ローカルなのに」と言っているのかもしれない。