漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

年末調整批判

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 今年もまた年末調整の時期がやってくる。
 
 毎年、11月頃の恒例年中行事のようになっているが、謎の行事である。
 
 この時期になると毎年、年末調整を担当している事務の人の苦労、そして「書き方が分からない」、「めんどくさい」といった会社員の声が溢れる。最近もこんなのを見た。

🧑‍🎤「年末調整をする前に 言っておきたい事がある かなり厳しい話もするが事務員の本音を聴いておけ」 - Togetter

 
 年末調整では「扶養控除等申告書」というのがあって、養っている家族がいる場合はその用紙に書けば所得税がいくらか控除される。
 
 年末調整の用紙にはマイナンバーを記入しなくてはいけない。自分の分だけではなく扶養控除等申告書を出す場合は家族の分のマイナンバーもだ。だが、毎年記入しなければいけないわけではない。「そう言えば去年マイナンバー書かなかったなぁ」という人も多いのではないだろうか。一度会社に伝えて、会社がきちんと管理しているならば、マイナンバーの部分は会社が記入するので毎年いちいち記入する必要はない。つまり、会社にマイナンバーを伝えるのは初回だけなのである。
 
 年末調整は、会社が従業員に代わって国に所得税を納めるための準備作業である。
 
 だが。なぜ毎年、扶養控除等申告書を書かなければいけないのか。マイナンバーを届けているのだから国が調べれば分かるはずである。「国はあなたの家族のことまでは分かりません!」と言う人がいるかもしれないが、家族のマイナンバーも届けているのである。分かるはずである。
 
 生命保険の控除なども国がマイナンバーを通して保険会社に訊けば分かることである。わざわざ会社員に申告させることではない。こういうことを言うと、「保険会社にマイナンバーを届け出ていない人もたくさんいます!」などと言う人がいる。私はマイナンバーを届け出ている人の話をしているのである。届け出ていない人についての話はしていない。届け出ている人の分に関してはきちんとマイナンバーを使って国が調べるべきなのである。
 
 プライバシーの侵害とか、「それはマイナンバーの利用目的から逸脱しているのでは?」と思う人もいるかもしれないが、“税”に関することはマイナンバーの最も主たる目的なのである。こういうところでマイナンバーを使わないのだったら何のためのマイナンバーか。
 
 以前、私が確定申告批判給付金申請批判を書いた時にも、「そうじゃない人はどうするのか」、「マイナンバーを正直に届け出ている人は少ないからそういう施策はできない」と言う人がいた。
 
 あなたたちは、1億人が1人残らずマイナンバーを提出するまで何の施策もしないつもりなのか?そんな馬鹿げた話はない。1億人中、10人でも100人でも素直にマイナンバーを届け出た人がいるのなら、国はその10人のために動かなければいけない。なぜなら国がマイナンバーの提出をお願いしたのだから。
 
 国税庁は国民にマイナンバーの提出をお願いしておきながら、銀行や保険会社に素直にマイナンバーを届け出た人たちに対して、何もしていない。素直にマイナンバーを届け出た人たちは今のところ何の利点も恩恵も得ていない。
 
 マイナンバーから辿れば分かることを国民に、ましてや所得や預貯金額や個人情報を国に把握されることに同意しマイナンバーを提出している国民に、訊くべきではない。
 
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