漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

マイナンバーとマイナンバーカードの違い早見表

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 マイナンバーとマイナンバーカードがごちゃごちゃになってしまっている人は非常に多い。この二つは名前が似ていることに加えてマイナンバーカードにマイナンバーが搭載されているので、政府が何か計画を発表するたびにこの二つを取り違えた的外れな批判が起きる。
 
 例としては、「マイナンバーカードで成績を管理する」という計画が発表された時に「マイナンバーで成績が管理されるなんて恐ろしい」という批判が出た。あるいは、「ワクチン接種をマイナンバーで管理する」という計画が発表された時に「マイナンバーカードを持ってない人はワクチン打てないんですか」という批判が出た。
 
 こういう的外れな批判の数々は、多くの人々がマイナンバーとマイナンバーカードの違いをきちんと理解していないことから起こる。
 
 私は政府の政策に批判的な立場だが、国民がもっと“正しく批判する”ためにこのブログでもマイナンバー制度に関する記事をたくさん書いてきた。まるで政府の手先のようになって。
 
 今回はマイナンバーとマイナンバーカードの違いの早見表を書いてみた。

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1. 何
マイナンバー:12桁の数字列(番号)
マイナンバーカード:プラスチック製の札(ふだ)
 
2. 誰が使う
マイナンバー:国、行政機関、公的機関
マイナンバーカード:国民
 
3. どこで使われる
マイナンバー:バックオフィス
マイナンバーカード:フロントオフィス
 
4. どのような目的
マイナンバー:情報連携
マイナンバーカード:本人確認(身分証明)
 
5. 用途制限
マイナンバー:あり
マイナンバーカード:なし
 

1.何

 マイナンバーとは12桁の個人番号のこと。マイナンバーカードはプラスチック製の札。ただし電子証明書に関してはスマートフォンに格納する計画がある。

2. 誰が

 マイナンバーとマイナンバーカードの違いで重要でありつつ見落とされている部分。使う主体。マイナンバーは行政機関、公的機関が使うもの。マイナンバーカードは国民が使うもの。マイナンバーで管理する主体は国であり、マイナンバーカードで管理する主体は国民である。なので例えば「マイナンバーカードで成績を管理する」と言ったら、それは国が管理するのではなく国民自身が管理する。使う主体は誰なのか、ということが分かっているだけで勘違いも少なくなると思う。

3. どこ

 マイナンバーカードはフロントオフィス、マイナンバーはバックオフィスである。オフィスに例えるなら、マイナンバーカードは店舗で、マイナンバーは本社ビルで使われる。店舗に例えるなら、マイナンバーカードは窓口で、マイナンバーは裏の従業員専用部屋で使われる。使われる場所の違いもマイナンバーとマイナンバーカードを見分ける要素になる。

4. 目的

 両者はその目的も違う。マイナンバーの目的は情報連携。マイナンバーカードの主たる目的は本人確認。ただし、このブログでも再三言っているように、マイナンバーカードの身分証明証としての使い方はオフライン(対面)ではなく主にオンライン。身分証明証というとほとんどの人は役所や店舗の窓口で「今日は何か本人確認できるものはお持ちですか?」と聞かれて、「はい、持ってきましたよ、マイナンバーカード」と言って財布の中からマイナンバーカードを取り出すようなシーンを思い描いているだろう。たしかにマイナンバーカードはそういう使い方もできるが主にはオンラインで使うことが想定されている。これからの時代は「役所を訪れる」というのは実際に役所まで足を運ぶことではなくて、役所のホームページを開くことを意味する。同様に「携帯ショップを訪れる」も、リアル店舗に足を運ぶわけではなくて自宅にいながら携帯電話会社のサイトまたはアプリを開くことを意味する。その時になりすましを防ぐために本人であることを証明する必要が出てくる。そこで使われるのがマイナンバーカードである。(マイナンバーではない。)マイナンバーカードをカードリーダーに翳して「本人ですよ」ということを証明する。

5.  用途制限

マイナンバーって限られた用途にしか使っちゃいけないんじゃなかったの?なんで保険証や運転免許証と紐付けられようとしてるの?」。これもよく聞く誤解。マイナンバーは用途が制限されているが、マイナンバーカードの用途に制限はない。
 
 以上のことが分かっていれば、ある場面においてマイナンバーが使われているのか、それともマイナンバーカードが使われているのか、判別がつきやすい。
 
練習問題:コンビニで住民票の写しを取得する時に使われるのはマイナンバーかマイナンバーカードか。
 
答え:マイナンバーカード
 
誰が使う→国民(である私)が使う。
どこ→フロントオフィス(目に見える場所)で使われる。複合機から紙が出てくるのが目で見える。
目的→本人確認。他人の住民票を勝手に取得できてはまずいので、複合機が「本当にご本人ですか?」をチェックしている。
 
 以上の点からコンビニで住民票の写しを取得する時に使われるのはマイナンバーではなくマイナンバーカードであることが判る。
 
 特に大事なのは「誰が」という点で、ここがわかっていれば政府が「ワクチン接種においてマイナンバーを使う」と言った時に「マイナンバーカードを持ってない人はどうするんですか?!」といったような恥ずかしい間違いを言わなくて済む。マイナンバーを使うのは国民ではなく国であるということがわかっていれば。
 
 最後に少しややこしい話を付け加えると、マイナンバーカードの中にはマイナンバーが入っている。ここが人々がマイナンバーとマイナンバーカードを混乱する原因の一つだと思う。
 
 以前、とある弁護士が「マイナンバーカードのICチップの中にはマイナンバーは入っていません」と書いている記事を見かけたことがある。それは間違いで、マイナンバーカードの中にはデジタルの形でマイナンバーが入っている。電子証明書の中にはマイナンバーは入っていないがマイナンバーカードのICチップの中にはマイナンバーが入っている。つまりマイナンバーはICチップの中だけど電子証明書の外、という場所に入っている。弁護士が間違っているぐらいなのだから人々が理解していないのも無理はない。
 
 で、マイナンバーカードの主な利用目的は上にも書いたように本人確認である。この時は電子証明書を使う。なのでマイナンバーは“蚊帳の外”なのである。ではなぜマイナンバーカードの中にマイナンバーが入っているのか?それは国が「あなたのマイナンバーは?」と聞くことがあるからである。その時いちいち役所まで足を運んで職員にプラスチックカードを提示したり、家でマイナンバーカードをスキャンしてPDF画像にしてメールに添付して送信して、などとやっていたのでは情けない。
 
 あと、マイナンバーカードのことを略して「マイナンバー」と言ってはいけない。混乱の元。
 
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