漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

東京オリンピック批判

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Peter Hによる画像

 

 それは今から16年前、ある一人の老人の思いつきから始まった。

 

 今、東京オリンピックに対する批判の声をたくさん目にするが、このオリンピック自体が一人の老人の思いつきから始まっていることをどれだけの人が憶えているだろう。その老人は何もコメントしない。歳だからなのか、こういう時は黙っているのが賢明だからなのかは分からない。

 

 小池都知事豊洲移転や東京オリンピックの問題で方々から批判されている。先日は過労で入院した。築地市場豊洲移転もオリンピックもどちらも先先々代の思いつきである。自ら望んで都知事になったとは言え、先先々代の思いつきの後処理ばかりで過労になるのは同情を禁じ得ない。

 

 「思いつき」は16年前なので当時は大義名分が無かった。その後、2011年に東日本大震災が起こり、「震災からの復興」という大義名分が付いた。が、その大義も完全にどこかへ行ってしまった。被災地は置いてけぼり。

 

 その後2016年の招致でリオに敗れた東京は、目的を見直すことなくそのままずるずると2020年に立候補へ。

 

 そして2020年にはCOVID19パンデミックが起こり、「人類がコロナに打ち勝った証」という新たな名分が加わった。が、2021年7月現在は打ち勝つどころか肝腎の東京で感染者が増えている。世界中で外国への渡航が制限される中、世界中の人を東京に集めてしまってアベコベにCOVIDの感染拡大に貢献してしまっている。

 

 消えてしまったのはこの「建前」二つばかりではない。次の「本音」二つもだ。

 

 一つ目の本音は「経済活性化」。無観客になったことで期待していた経済効果は到底得られそうにない。

 

 二つ目の本音は「国威発揚、国家の威信を示す」。これも果たされないどころか、逆の効果を示すことになりそうだ。私が政府が言っていることで唯一その通りだと思うことは「反対論や批判も多いが、オリンピックは強行開催してしまえばそれなりに盛り上がる」という意見だ。これは私もそう思う。開催国はいつものオリンピックよりは少しはメダルを獲るものなので、開催してしまえば、日本は日本人選手の活躍に沸き立つだろう。

 

 だが、日本だけだ。それは内輪の盛り上がりだ。無観客でまったく盛り上がらないオリンピックに海外の人々は白けた眼差しを向けるだろう。眼差しを向けてくれればまだマシだが、興味も持たずオリンピックが東京であっていることすら知らない人も多いかもしれない。

 

 日本政府と日本国民はいったい何を望んでいるのか。多額の金をかけて「日本=ショボい」というイメージを世界に発信したかったのか。それなら今回のオリンピックは「大成功」ということになるだろう。

 

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