漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

オリンピックはバーチャルで

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 オリンピックの話題は開催強行派と反対派の意見ばかり目にする。 

 賛成派の人たちはやはり盛り上がりたいのだろう。反対派の人たちは、強行開催してこれ以上パンデミックが広がったらどうするんだ、ということを心配している。もっともな心配だ。 

 しかし開催か中止かの二択ではない。私はオリンピックはバーチャル(インターネット上)でやればいいと思う。バーチャルなら実際に各国の選手団や関係者が日本に移動するわけではないから、パンデミックの心配は要らない。

 なぜ「バーチャルでやろう」という声が上がらないのか。バーチャルオリンピックは決して夢のような話でも未来のSFの話でもない。今でも実現できるものである。 

 いま世界ではVR(仮想現実)の技術はとても進歩している。実際、昨年2020年に、世界最高峰の自転車レース大会であるツール・ド・フランスパンデミックという非常事態を受けて「バーチャル・ツール・ド・フランス」を開催した。これはZwiftというテクノロジー企業の協力で実現している。 

 どのような仕組みかと言うと、世界各国の選手たちはそれぞれの部屋でエアロバイクのようなマシンを漕ぐ。その車輪の回転はバーチャル上のアバターに投影され、速く漕げばそれだけ自分のアバターも速く進む。バーチャル上のコースは逆に部屋の中にあるマシンに投影され、上り坂の所ではマシンにも傾斜がつきペダルは重くなる。選手は目の前に映し出されたコースの映像を見ながらハンドルを右へ左へと動かす。 

 マラソンもランニングマシンを使ってほぼ同じようにできるだろう。VR企業とStravaあたりが手を組めばバーチャルで実現できるだろう。テニスだったらPlaysight、観戦のプラットフォームならFancredとか。他にも射撃やアーチェリーなど、バーチャルでできる競技種目はたくさんありそうだ。 

 こうしたテクノロジーは今とても進歩している。四、五十年後の未来の話ではなく、今すぐにでも開催できそうな競技がいっぱいある。世界中のVR企業、ゲーム企業、IT企業にとっては自社のテクノロジーを宣伝するチャンスでもあるので、積極的に協力してくれるだろう。

 

「バーチャルで優勝した人に金メダルを与えたり、記録を正式な記録として認めてよいのか」 

 私はバーチャル大会における結果は、リアル競技の結果と同じ扱いにはできないと思っている。だから金メダルは仮のものであり、記録も参考記録扱いにするのがいい。そしてすべての記録と結果が「仮」扱いになるならば、大会そのものを非公式扱いにするのがいい。(参照:東京オリンピックはインターカレート大会としてオンラインで - 漸近龍吟録

 

「バーチャル大会に参加するためのPCやブロードバンド環境が調っていない国はどうすればいいのか」 

 非公式大会なので、すべての国が無理に参加しなくてもいい。

 

「COVID19パンデミックでオリンピックどころじゃない国もある」 

 非公式大会なので、今たいへんな国は無理に参加しなくてもいい。

 

「スポーツというものは、バーチャルよりもやはりリアルの方が、迫力もあって価値も高いと思うが…」 

 私はリアルはもう古いからバーチャルに移行すべきだ、と言っているのではない。中止するぐらいだったらバーチャルでやればいい、と言っているのだ。COVID19が終息したらまたリアルでやればいい。

 

 これはオリンピックが元々「祭典」であったことを思い出させるものである。祭典はおまつり、遊びの要素がある。脚自慢の者たちが駆けくらべをしている。「なんだなんだ、なんか面白そうなことやってるな」、そう言って人々が自然と集まってくる。これが原点である。現代人はネット上で集まることに慣れている。ネット上で今面白そうなイベントがあっていると聞けばすぐに駆けつける。そして「イベントは終了しました」という知らせを見て「ああ一足遅かったか」という経験をしたことのある人もたくさんいるだろう。 

 私は、バーチャル大会は世界中の一体感を出すためにストリーミングライブ、つまりリアルタイムでやるのがよいと思っている。そうなると国によっては真夜中にランニングマシンで走らなければいけない国も出てくるわけだが、遊びなのだからそれもいいだろう。 

 「お、東京オリンピックは何か面白そうなことやってますね」。「リアルの方は中止になったって聞いてましたけど、ネット上でこんな面白いことやってたんですね」。世界中の人にそう言ってもらいたい。そして世界中の人々が集まって、リアルタイムで自国の選手へ応援コメントなどをして盛り上がったら、どんなにか楽しいだろう。

 

「みんな、今すぐ"Tokyo Virtual Olympic Games"で検索してみて!めっちゃ楽しいことやってるから」

「本当だった…」

東京オリンピック中止になったと思っていたのに、密かにこんな面白そうなことやっていたとは…」

世界中の人たちにSNSでそう呟いてもらいたい。

 

 私は東京人として日本人として、世界の人々が「その発想はなかった」、「COVID19を逆手にとってオリンピックをバーチャルでやっちゃおうなんて、日本人の発想はクレイジーだな」と良い意味で言われたい。

 また、このような大会を開くことは、日本がテクノロジーの先進国であるというプラスのイメージを諸外国に対して与えることにもなる。(実際の技術の部分は外国企業に頼っていたとしても。) 

 「いつもの」オリンピックではない。見たことない、なんだか楽しそう、どうやって走るの?、どうやって順位を決めてるの?、どうやって観戦するの?、初めてのワクワクがいっぱいのオリンピック。すっかり巨大な商業五輪になってしまったオリンピックから、「なんだなんだ、なんか面白そうなことやってるな」と言って人々が集まってきた、あのオリンピックの原点を取り戻すことができる絶好の機会なのだ。

 

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