漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

マイナンバーカードはスマホのようなもの

 マイナンバーカードはよく「運転免許証の代わりみたいなもの?」と言われることがあるが、マイナンバーカードは譬えるとしたら運転免許証のようなものではなくスマホのようなものである。
 
 マイナンバーカードのICチップの中にはいろいろなアプリを後から入れることができる。また、JPKIという仕組みが備わっていて、これを活用することによってマイナンバーカードの用途はまだまだ拡げることができる。JPKIは日本語で言うと公的個人認証で、これはオンライン版の本人確認である。
 
 これは宛ら、後からいろいろアプリを追加できるスマートフォンに似ている。
 
 「マイナンバーカードって一体何なんだ。何にも使えないじゃないか」と言って怒っている人が多い。「身分証明書ならすでに運転免許証を持ってるからそれで充分だし、保険証もすでに持っている。マイナンバーカードでできることと言ったらコンビニで住民票の写しを取れることくらいじゃないか」と。
 
 その怒りはごもっとも。スマホに譬えるならアプリが一個も入っていないスマホを配られたようなものだ。アプリが入っていなければスマホはただの「板きれ」だ。
 
 だが、「だからマイナンバーカードなんて廃止しろ」と言うのは違う。分かってほしいのは、今のマイナンバーカードは「完成型」でも「最終型」でもないということだ。
 
 買ったスマホにアプリが0個、あるいはたったの1個か2個しか入っていなかったとして、「何の役にも立たない板きれだ。こんなものは捨ててしまおう」とはならないだろう。その「板」は拡張性のある板だ。あとからアプリを追加していくことで便利な物となる。ただの「板きれ」ではない。マイナンバーカードも同じこと。今はほとんど何にも使えないただの「プラスチック製の札(ふだ)」だが、だからと言って「廃止しよう」「捨ててしまおう」と言うのは違う。
 
 マイナンバーカードがスマホと違うのは、民間企業ではなく国が主導でやっているのでとても動きが遅いということだ。最近もJCBが災害時にマイナンバーカードで決済できるようにという実験を始めたらしいが(災害時にマイナンバーカードでキャッシュレス決済 横須賀市やJCB - Impress Watch)、とにかく動きが遅い。保険証として使えるという話は出てきているが、マイナンバーカードは本来なら、診察券もお薬手帳もウォレットも入れることができる。今、私たちは病院に行くときに診察券・保険証・お薬手帳・財布を別々に持って行っているが、これはマイナンバーカード1枚持って行けば済む話である。だが、全然そういう具体的な話が出てこない。
 
 私はマイナンバー制度(マイナンバーやマイナポータルやマイナンバーカード)を基本的には支持している。マイナンバーもマイナンバーカードもそれなりに「スグレモノ」だと思っている。だが、その使い方(あるいは使われなさ具合)が酷い。 
 
 国はこのスグレモノをどんどんどんどん悪い方向へ持って行き、国民から嫌われる方向に持って行っている。スマホスマホ業者が「国民の皆さん、お願いだからスマホを持ってください」などと言わなくても、国民のほうから進んでスマホを持ちたがった。スマホがただの板ではなく便利で魅力的なデバイスだからだ。マイナンバーカードはスマホに匹敵する利便性と魅力を持ったデバイスである。今はまだアプリがほとんど入っていないただの札(ふだ)だが、その拡張性によって今後はスマホと同じような利便性を持ちうる。
 
 機能を拡張して着実に利便性を高めていけば、好印象のまま国民がカードを持ちたがるように持って行くことが容易にできるのに、なぜ国は、餌(ポイント)で釣ったり、持たない人を懲らしめたり、わざわざ悪印象な方向に持って行こうとするのか。
 
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