マイナンバーカードの普及にはスマホへの格納が欠かせない
マイナンバーカードの交付が始まってから約三年が経つ。
が、まだ国民の2割にも普及していないという。
その理由を考えてみたが、次の三つくらいだろうか。
理由の一つとして考えられるのは、本人確認書類として使えなくなる、ということだろうか。顔写真がないと対面での本人証明書類としては使いづらくなる。これがマイナンバーカードをスマホに格納しない、できない要因だろうか?
二つ目はセキュリティ上の問題。スマホは常時インターネットに繫がっている。
三つ目は単に技術的に難しいという技術的な問題。
私は、マイナンバーカードは「一枚に集約する」という思想があったものと理解している。
例えば、病院に行った時のことを考えてみよう。
病院に行ったら、診察券を見せる必要がある。保険証を呈示する必要がある。お薬手帳に処方薬を記入してもらう。診療費を払う。
少なくともこれだけのことをやる。
最近はなぜか聞かなくなったが、マイナンバーカードにはキャッシュカードを入れるという案もあった。しかしそれをしなくても、今のスマホには「ナントカペイ」等の「お金」が入っている。診察券やお薬手帳もマイナンバーカードの中に早く入れるべきだ。
そしてマイナンバーカードがスマホに入れば、病院でのこの一聯の手続きはすべてスマホを翳すだけで済む。スマホだったら、わざわざ持って行く、という感覚がない。人はいつ病院にかかることになるかわからない。プラスチックのマイナンバーカードを普段から持ち歩こう、という人はあまりいないだろうが、スマホだったら常に持ち歩いている。
何年ぶりかで行くことになった病院の診察券を家中引っ搔き回して探した経験のある人も多いだろう。病院の窓口で財布や鞄の中から診察券を必死で探したり。「すみません、保険証忘れちゃって…」「今日、診察券忘れちゃって…」と謝っている患者もよく見かける。
で、「それらに加えて今度からはマイナンバーカードも忘れずにお持ちください」と言うのでは患者の労苦を増すばかりである。病院に来る人は体調が悪いのである。そもそも具合の悪い人にそんなにたくさんの持ち物を持って来い、という労苦を強いるべきではない。
マイナンバーカードはこういうときのためのソリューションの一つではなかったのか。
マイナンバーカードと医療分野の連携の話となると、「ビッグデータを活用して病気の治療に役立てる」という視点からの話ばかり聞くが、もっと病人の通院時の労苦の軽減という視点からも考えるべきである。
なぜプラスチックカードなのか。
「諸外国でもプラスチックカードを発行しています」と言うかもしれない。
しかしそれらの先進国の共通番号制度やPKIは、20世紀だったり00年代にスタートしているのだ。日本はそれらの国々よりずっと後発なのに、どうしてプラスチックカードという前時代的な形にしているのだろう。
日本がマイナンバー制度・マイナンバーカードを作るときに参考にしたオーストリアの国民ID(カード)は、論理ユニットにして特定のデバイスに依存しない形にした。モデルにしたのなら、どうしてそこを真似なかったのだろう。
いまどきスマホに入らないのでは、国民にはなかなか普及しないだろう。
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