漸近龍吟録

反便利、反インターネット的

日本の暗号通貨税制は世界最悪

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 暗号通貨の世界は、世界的には魅力的だが、日本では魅力的ではない。日本における暗号通貨は“死んでいる”。
 
 日本の暗号通貨に対する税制は世界最悪に近い。よく「日本は暗号通貨に寛容な国」みたいな言葉も聞くがそんなことはない。日本における暗号通貨に対する税は世界一厳しい。
 
 特に酷いのは暗号通貨で買い物をする時に所得税がかかるところである。円に交換した時に所得税をかけるのはまだしも、暗号通貨でそのまま買い物をした時にまで税がかかる。これでは誰が暗号通貨で買い物をしようと思うだろう。BTCで買うより円で買う方が明らかに得なのだから誰だって円でしか買わないだろう。
 
1. 世界に類を見ない高税率
 世界の多くの国では20%以下。日本は最大で55%という世界に類を見ない高税率。
 
2. 短期長期の区別がない
 アメリカ、ドイツでは短期と長期の区別がある。区別の境目は1年。1年以上の長期保有の場合は税率が低くなるか無くなる。日本にはこの区別がない。
 
3. 低い基準額
 納税義務が発生する基準額は、アメリカは80,000ドル/年。日本は200,000円/年。1ドル110円で計算すると、アメリカと日本は約44倍もの開きがある。
 
 上記三つの内、1ばかりが注目されがちだが2と3も重要である。日本の税制はおかしいから変えましょう、という意見はネット上でも偶に目にする。だがそのほとんどは所得区分を「雑所得」から「譲渡所得」に変えましょうという話だ。所得区分を変えることで税率を20%に抑えることができる。
 
 だが抑々、暗号通貨という新しいものを既存の枠組みのどこに当て嵌めるか、と考える考え方がおかしい。暗号通貨用の新しい税の枠組みを考えるべきではないか。元々、暗号通貨に税をかけたり監視・規制を強めるのはマネーロンダリングや金融犯罪に備えるためである。そのため他国では短期長期で区別する。短期での売買は不正目的もあり得やすいため長期にくらべて税率を高くしている。だがすべてを厳しくしすぎてしまうと“常用”までができなくなってしまう。そのため所有し始めてから1年以上経っている暗号通貨に関しては税を緩くしている。日本はすべてを厳しくしすぎて“常用”までできなくなってしまっている国だ。
 
 アメリカでは長期保有していれば、且つよほどの大きな額の買い物でなければ、暗号通貨での買い物に税はかからない。ドイツもイギリスもオーストラリアも暗号通貨に対する税は日本よりずっと緩い。長期か短期かで分けるのは、短期だと不正・不当に稼ごうとする輩が出てくるからだろう。日本でもそういう短期の取引による儲け目的のようなものはきちんと規制すればよい。そういう規制は十分に厳しくした上で、そういう儲け目的ではない通常のユースケースについては税は外すべきだ。
 
 東京の一人暮らしの人が一か月にかかる支出は約20万円だという。一年で約240万円だとすると、アメリカの基準80,000ドル/年なら、十分に暗号通貨だけで生活していくことができる。日本の基準200,000円/年ではとても暗号通貨で生活していけない。
 
 暗号通貨は使えてこそ。日本では、法定通貨への交換、他の暗号通貨への交換、買い物、のすべてに税がかかる。これは「暗号通貨を使うな」と言ってるに等しい。「暗号通貨には本質的に“価値の貯蔵”という価値がある」と、海外で言われている言葉を受け売りで言っている日本人をたまに見かける。だが、それは「使おうと思えば使える」という前提があるからこそ言える言葉なのだ。日本のように“使えない”環境では成り立たない。
 
 暗号通貨にかかる税のことを調べていると「保有している分には税はかかりません」という言葉によく出会す。ずっと一生保有していてそれが何になるのか。使えないものをどんなにたくさん保有していてもそのことに一体何の意味があるのか、私には分からない。
 
 日本の現在の税制では、暗号通貨を円に戻しても暗号通貨で直接買い物をしても他の暗号通貨と換えても、どの方法をとっても、とても高い税がかかる。
 
 日本人は貯蓄好きで使わないのが問題だ、と長らく言われてきた。使わないから経済が回らず不景気になるのだ、と。だが、暗号通貨にかかる税制はこの傾向を後押ししている。株や不動産に比べても、あるいは海外と比べてもかなり高い税が、日本の人々に暗号通貨の利用を躊躇わせている。
 
 私が調べたかぎりでは、中国のような特殊な国を除いて、日本の暗号通貨税制は世界最悪である。世界の多くの国では、暗号通貨にかかる税制はまだ決まっていない。シンガポール、マレーシア、ポルトガルのように、暗号通貨の個人使用に税がかからない国もある。アメリカ、ドイツ、オーストラリアも暗号通貨の使いやすい国だ。それに比べて日本は、突出した高税率、短期長期の区別なし、低い基準額という点で世界最悪の税制になっている。
 
 ボリビアエクアドルでは暗号通貨は全面的に禁止されているという。その方がまだマシだと思える。「ボリビア政府は暗号通貨が嫌い、だから一切禁止します」。その方が筋が通っている。日本は「暗号通貨は購入も所有も自由ですよ。その代わり使う時はいかなる形であっても世界一高い税を取りますけどね」。
 
 日本政府は暗号通貨への規制を強める時によく「利用者保護のため」と言う。たしかに近年は暗号通貨界隈では詐欺か詐欺紛いの話が横行し被害に遭っている人も増えていると聞く。だがこれではまるで政府が巨大な詐欺集団だ。騙し、囮捜査、低俗なTV番組やYouTubeチャンネルで見るドッキリを行っているようなものだ。実際にはほぼ“使えない”通貨を購入も所有も自由ですよと言っているのだから。悪い人たちによる“不当な”金儲けの手段になることを心配しているのなら、他の暗号通貨や金(ゴールド)や宝石など換金性の高い物だけに税をかけて、食料品、湿布、糊、電球などのような日用品については非課税とすべきだ。一方では「NISAは非課税」などと言って投資を勧める政策をとりながら、一方では貯蓄を勧めている。
 
 「だからBTCではなくJPYがオススメなんですよ」と言いたいのかもしれないが、今、たくさんの日本人が円を暗号通貨に換えてホ一ルドしている。これは円の死蔵である。昨年から今年にかけて、日本の主要な暗号通貨取引所の新規アカウント開設数が急増しているというニュースも見た。どのぐらいの割合の日本人が暗号通貨を使い始めているのか具体的な数字は判らないが相当数の日本人が暗号通貨を購入し所有している。そして価格の高騰を受けて円に戻したり他の暗号通貨に換えてみたりした人たちもたくさんいるだろう。近い将来、確定申告の時期に悲鳴を上げる人がたくさん現れるだろう。会社員の人たちは確定申告はやったこともないだろうし、特に一つの暗号通貨で別の暗号通貨を購入した場合、それを複数回繰り返していた場合などは計算がとても難しくなる。
 
 日本は世界でもいち早く暗号通貨に関する税のルールを整え、暗号通貨フレンドリーな国と見られている。しかしそれは表の顔で、入口では両手を広げているが、出口では首を絞め上げている。今はまだ気付いている人も少ないが、これから徐々に日本人も「日本では暗号通貨は使えない」ということに気付き始めるだろう。
 
 悪用は厳しく取り締まるべきだが、常用、日常の用まで奪うべきではない。こんなことでは日本は暗号通貨の世界で一人だけ遅れて取り残されていくだろう。
 
 
※一般には「仮想通貨」と呼ばれ、政府は「暗号資産」という言葉を使っているが、私は暗号通貨に初めて出会った時から通貨として使えることが大事だと考えているので、この記事では「暗号通貨」という言葉を使っている。
※調べて書いたが、私は税や法律にはあまり詳しくないのと情報が旧くなっている可能性もあるので、日本および世界の税制について正しい情報を知りたい方は他のサイトを当たってほしい。
 
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